デジタル化で「うまくいった」「失敗に終わった」 飲食店の決定的な差:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(2/6 ページ)
外食産業のDXの重要性が問われる中、デジタル化をしてうまくいく企業とうまくいかない企業があります。その違いはどこにあるのでしょうか。
私の著書『いまこそ知りたいDX戦略』の中でも述べていますが、DXとは「ツールの導入を行うといった局所的なIT導入ではなく、デジタル技術を採用した根本的なビジネスモデルの変換を指す」のです。
その点でいうと、ブルースターバーガーでは業務効率化・経費削減のツールとして「ITを駆使すること」自体が目的となってしまっていたのかもしれません。
そのため、そもそも外食産業を行う上で最も重視すべき「顧客と従業員の満足度」への配慮がおろそかになってしまい、競合優位性の確立やビジネスモデルの変換というDXの本質にまで至ることができなかったと言えます。
「トラック内でロボがピザを作り届ける」スタートアップの挫折
同様に、IT活用を全面的に押し出し一時的に注目を浴びたものの、数年で閉鎖してしまった米国の飲食スタートアップに、Zume Pizza(ズームピザ)が挙げられます。
Zume Pizzaは、オーブン搭載のトラック内でロボットがピザを作り熱々のピザを顧客へ届ける、という新規性と技術力を売りにしたスタートアップでした。
ソフトバンクビジョンファンドから3億7500万ドル(約535億円)以上の投資を受け、その資金を使って一気にトラックを購入し、内装工事を施しました。車内でロボットがピザ生地を成形し、トマトソース、トッピング、チーズなどを置いてオーブンでピザを焼いて取り出す、という工程が行える“オーブントラック”に改装したのです。これにより、トラックで配達先に向かう最中にピザを焼くことができるため、消費者により早く出来立てのピザを届けられると考えたのです。
16年の創業当初は、まずまずの出来でピザを提供していました。レビューサイトでは、新鮮な食材と迅速な配達を評価するレビュアーがおり、「低価格のピザショップより明らかに良い」と書いた人もいました。
しかし最終的には、車で配達先に向かいながらピザを焼くという戦略を転換せざるを得なくなりました。
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