“1泊100万円”の城主体験 宿泊客から「安すぎる」と言われるワケ:天守に泊まる(3/5 ページ)
「1泊100万円」で天守に宿泊、伝統ある城の“お殿さま”になれる──そんな一風変わった宿泊プランを提供する城が愛媛県大洲市にある。宿泊客は「安すぎる」と話し、地元住民は「目に見えて街が変わった」と話すこの取り組み。一体どんなものなのかというと……。
花火から夏祭りまで オーダーメイドで旅程を作成
オプションで人気なのは打ち上げ花火だ。パートナーとの記念日などで宿泊するお客からの依頼が多い。その他にも、文化や街づくりに興味を持つ知的旅行者が多く、識者による街歩きツアーなど、歴史や文化が学べる場を得たいと相談されることがままあるという。
想像だにしていない要望が来ることもある。
あるユーチューバーが宿泊した際、「夏祭りを再現できないか」という要望があった。地元の工務店と協力して焼きそば、かき氷、ヨーヨー救い、仮面、くじなどさまざまな屋台を2人の宿泊客のためだけに用意した。
こうしたお客の要望を聞きながら、実現可能なものはその後のオプションに追加し、プラン例を充実させていっている。
「2日間に100万円以上をかけて泊まられる方がどのような要望を持っているか、僕たちも正直毎回どきどきしています」
「100万円は安すぎる」と言われるワケ
この大洲城キャッスルステイのアイデアが生まれたのは18年だ。その当時はインバウンドでの来客を見込んでいた。情報を解禁した際も、旅行会社による情報の問い合わせの量や熱意は、国内よりも海外のほうが高かったという。しかし、新型コロナウイルスの影響でその計画は全て白紙に帰した。
ただし、これまで海外旅行にお金を落としていた日本の富裕層が代わりに興味を持ってくれるようになった。利用客のほとんどは東京住まいで、経営者や士業の方が多いという。
吉田さんは「歴史や文化、街づくりへの尊重してくださるお客さまが多いです。文化を守るわれわれの取り組みの意義に感銘を受けてくださる方が多く、総じて満足度は高いです。泊った方が別の方を紹介してくださった例もあります」と説明する。
「宿泊者の方は、口をそろえて『100万円は安い』とおっしゃいます。これは、われわれとしても、良い驚きでした。甲冑を着て城に向かい、何十人もの家臣や楽隊が出迎える入城セレモニーを体験した時点で『採算合ってる!?』『(100万円は)安すぎない?』と言われることが少なくありません。食事の評価も高いです」
吉田さんの分析によると、入場体験などを通して「街全体で歓待してくれている」という実感や、普段は身近に感じることがない文化財の中で寝食することへの感動などが、特に宿泊客に評価されているという。
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