“1泊100万円”の城主体験 宿泊客から「安すぎる」と言われるワケ:天守に泊まる(5/5 ページ)
「1泊100万円」で天守に宿泊、伝統ある城の“お殿さま”になれる──そんな一風変わった宿泊プランを提供する城が愛媛県大洲市にある。宿泊客は「安すぎる」と話し、地元住民は「目に見えて街が変わった」と話すこの取り組み。一体どんなものなのかというと……。
目に見えて「街が変わった」
大洲市では、大洲城キャッスルステイと同時期に古民家を改装した分散型ホテルの「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」もオープンしている。
分散型ホテルは現在、28室を運営。今年度新たに4室追加して、32室になる予定だ。予約は好調で、今年の8月には合計1000人以上が宿泊した。平均単価は1人1泊3.5万円ほど。
こうした取り組みによって「地元の方々は口をそろえて、『目に見えて来ているお客さんの層が変わった』『街が変わった』と言っています」と吉田さんは笑顔を見せる。
従来、大洲市の宿泊施設の多くはビジネスホテルだった。観光はバスツアー客がメインで、日中に大洲城などを観光して夜は別の観光地へ去っていくことがほとんど。そのため、街の経済への貢献にはつながっていなかった。
こうした状況から一変して裕福な顧客層が増え、街は劇的に変わったという。
「数年前では一切考えられなかったようなことが、今この街の中で起きているという実感があります。1泊2日の滞在の中で、街の中でお土産を買ったり、ご飯を食べたり、さまざまな消費が生まれます。こうした直接消費だけでなく、ホテルが地元のお酒や食材を買い付けてふるまう間接消費もあります。地域への波及効果はものすごく大きいと思います」
吉田さんは現在、バリューマネジメントからの出向の形で大洲市役所にも所属し、街づくりに深く関わっている。街としての今後の目標は、関係人口となるファンを増やしていくことだという。
「ホテルやキャッスルステイを目的に来たお客さまに、街のファンになって帰ってもらいたいです。継続的に、季節や人を変えて何度も足を運んでもらったり、ふるさと納税の際に選んでいただいたり、長く街とのかかわりを持ってくれる方をいかに増やしていくかが重要だと思います。
そのためには、宿だけではなくこの街でお店をしている方々や地域の皆さまと連携して、街全体としておもてなしをする。街中のどこに行っても、温かく迎えられている。そういった街を目指していきたいので、街全体を巻き込んでこれからも取り組んでいきたいと思います」(吉田さん)
関連記事
- “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - ドムドムハンバーガー驚異の復活 風向きを変えた「3つの出来事」
「このままなくなってしまうではないか」と悲観されていた、ドムドムハンバーガーが復活し注目を集めている。最盛期の90年代には全国400店以上にまで拡大したものの、閉店が相次ぎ30店舗以下に。しかし、2020年度から最終黒字に転じて息を吹き返し始めた。その背景には何があったのか──? - 「キャンプでアイス食べたい人!」 ドンキの冷凍・冷蔵庫のパッケージに隠された“売れる理由”
ドン・キホーテが3月に発売した「持ち運べる冷凍冷蔵庫」の売れ行きが好調だ。キャンプと家庭内、2つの需要をカバーしたこの商品。ヒットの背景には、ドン・キホーテならではのこだわりや強みが詰め込まれている。開発担当者に話を聞いた。 - 「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ
真面目に勤めてきたが、上の世代とは違い「課長にすらなれない」──そんな状況に絶望する40代社員が増えています。減り続ける管理職ポストの実態と、深刻な賃金格差とは。「肩書きなき40歳問題」について河合薫氏が解説します。 - アマゾンの新しい返品方法 お金を返し、商品は回収しない──なぜ?
米国は、日本に比べて返品OKの小売店が多い。米アマゾンなどの大手小売りでは、返金するのに商品は回収しない「Keep it」という新しい返品方法が進められている。なぜ、このような手法を取るのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.