将来の売り上げを今、現金化 レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)とは?:金融ディスラプション(3/3 ページ)
フィンテックの進展が、資金調達の分野でもイノベーションを起こしている。その中でも注目なのが、レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)だ。企業の将来の売り上げを債権として買い取るという、新たな手法だ。RBFを手掛ける国内スタートアップ2社、FivotとYoiiに聞いた。
「将来の売上債権」とは法的には何なのか
興味深い仕組みのRBFだが、法的な側面にも触れておきたい。いわゆる融資は、銀行法や貸金業法で規定され、上限金利など利用者保護の観点などで規制されている。
一方で、RBFは「将来債権の買い取り」という仕組みであるため、貸金業には当たらない。受け取るのは手数料であり金利ではなく、特段規制する法律も存在しない。ただし根拠となるのは20年に改正された民法だ。すでに確定した債権の買い取りは、いわゆるファクタリングとして広まっているが、RBFのような未確定な債権も明確に定義された。「民法改定で将来債権が定義された。それまでも取り引きはできたが、これが定まったことで法的完全性が高まった」(安倍氏)
とはいえ、企業の将来の売り上げを元に評価してお金を貸す融資と、将来の売り上げを買い取って現金を渡すRBFは、実質的には同じものではないか? という疑問もある。しかし宇野氏はまったく別ものだと話す。
「融資は信用供与であり、売り上げが立っていなくても返済はしなくてはならない。しかし、RBFでは売上債権が取り消しになって発生しなければ、返済の義務はない。例えばコロナショックなどで売り上げがゼロになったら、こちら(RBF事業者)側のデフォルトとなる」(宇野氏)
このように、売上債権の扱いのためRBF事業者側のリスクも高いが、有利な点もある。例えば金利ではなく手数料扱いのため、上限金利を守る必要がない。例えば手数料10%で3カ月返済なら、実質金利としては40%近くに相当する。また、融資の場合は最初に返済額を確定しておく必要があるので、RBFの特徴の1つでもある定率返済は実現しにくい。
いずれにせよ、企業の資金調達手法に新たな選択肢が生まれるのは素晴らしいことだ。融資などの伝統的な手法は法律でガチガチに規定されているだけでなく、ライセンスを取得したりコンプライアンス順守のためのコストが非常に大きい。利用者保護やAMLは非常に重要なことだが、それが参入障壁となり利権化したり、変化する利用者のニーズに対応できないといった弊害もある。
そんな中、新たなニーズをカバーするRBFへの期待は大きい。現状、D2CやSaaS事業に対象が限定されてはいるものの、株式とも融資とも違う資金調達の方法として期待される。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
学費は「出世払い」で エンジニア養成校「CODEGYM」が取り組むISAとは?
初期の費用支払いなし、いわゆる「出世払い」でエンジニアとなるためのカリキュラムを受講できるサービスがある。LABOT(東京都渋谷区)が運営する「CODEGYM(コードジム)」だ。初期費用のかからない「ISA」という支払い方法を使い、転職が成功したあとに、月額額面の10%を30カ月に渡って支払うという仕組み。
カンムPoolの驚異の仕組み クレジットなのに事前チャージ、チャージ金額から投資リターン
カンムの新サービスPoolの最大の特徴は、クレジットカードでありながら事前チャージを必要とし、チャージした金額に対して1%のリターンを期待できることだ。これを実現するために、複数法を組み合わせることで、擬似的に銀行ライクなサービスを実現した。その仕組とは?
クルマが持てなかった人にローンを クルマの遠隔制御で金融包摂を目指すGMS
仕事に必要なクルマが欲しいがローンの審査が通らない。クルマの遠隔制御技術を活用することで、こうした人にもローンを提供する仕組みを提供しているのがFintech企業、Global Mobility Service(GMS)だ。
社員9人で米ナスダック上場 日本のベンチャーWarranteeが進める“無料保険”とは何か
東京証券取引所を飛び越して、2月に米ナスダック市場に上場申請を行った日本企業がある。庄野裕介氏がCEOを務めるWarranteeだ。社員はわずか9人。フリーインシュアランス、つまり無料保険について国際特許を申請しており、ナスダック上場の知名度を武器に、世界展開を進める。
決済手数料に悩む加盟店が、逆に決済手数料を受け取れる アララキャッシュレスの逆転の発想
ハウスプリペイドを企業に提供するアララは、新たにコード決済機能の提供もはじめ、店舗は独自Payサービスを実現できる。さらに、来春には非接触決済サービスの「iD」にも対応。このiDは、決済手数料負担に悩む加盟店にとって、逆に決済手数料を受け取れる機会をもたらす。
