カンムPoolの驚異の仕組み クレジットなのに事前チャージ、チャージ金額から投資リターン:金融ディスラプション(1/4 ページ)
カンムの新サービスPoolの最大の特徴は、クレジットカードでありながら事前チャージを必要とし、チャージした金額に対して1%のリターンを期待できることだ。これを実現するために、複数法を組み合わせることで、擬似的に銀行ライクなサービスを実現した。その仕組とは?
フィンテックサービスに新機軸が登場した。プリペイドカード「バンドルカード」を提供するカンム(東京都渋谷区)は6月15日、“資産形成に活用できるクレジットカード”をコンセプトに、Visaのクレジットカード「Pool」の発行を開始した。
このカードの最大の特徴は、クレジットカードでありながら事前チャージを行うこと、そしてチャージした金額から投資を行え、税引き前予定利回り1%のリターンを期待できることだ。さらにカード利用時も決済金額の1%をキャッシュバックする。カンムの八巻渉社長は「カードを使いながら資産形成していける」とうたう。
Poolの3つのメリット
Poolにはメリットが3つ存在する。1つは、利用者に投資機会を提供することだ。国内メガバンクの預金金利はほぼゼロ。そんな中で、Poolにお金を入れて投資すれば、年率1%のリターンが期待できる。1000万円まで投資できるなど、金額も大きい。
2つ目は投資の分かりにくさの解消だ。投資信託や株式などが投資の代表例といわれるが、とっつきにくく価格変動があることが、初心者にとってのハードルとなっている。Poolでは、元本保証ではないものの、市場で売買される投資商品ではないため、値動きを気にすることなく資産運用できる。
3つ目は、投資した金額もカード利用枠に含める仕組みを設けたことだ。Poolでは、チャージした金額の範囲内でカード決済の支払いに利用でき、資金を投資に回すこともできる。カード支払い代金に対して残高が不足している場合には、投資分がカンムに譲渡され支払いと相殺される。チャージした金額は現金として引き出すことこそできないが、この仕組みによって急な出費に対応できる形だ。
これらの特徴を見ると、表面的にはまるで銀行のようなサービスだ。銀行サービスでは、預金をすると金利が付き、預金残高の範囲でクレジットカードやデビットカードが使える。Poolはチャージした金額を投資に回せるとともに、決済にも利用できるわけだ。
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