カンムPoolの驚異の仕組み クレジットなのに事前チャージ、チャージ金額から投資リターン:金融ディスラプション(2/4 ページ)
カンムの新サービスPoolの最大の特徴は、クレジットカードでありながら事前チャージを必要とし、チャージした金額に対して1%のリターンを期待できることだ。これを実現するために、複数法を組み合わせることで、擬似的に銀行ライクなサービスを実現した。その仕組とは?
複数の法律を組み合わせることでサービスを実現
こんな魔法のようなサービスをどのように実現したのか。そこには、金融関係の法律を複数組み合わせる複雑な仕組みがあった。まずは、仕組みを図にしたものを見てみよう。
まずは1つ目のチャージだ。お金を預かる預金は、銀行だけに許されており、銀行免許を持たないと実現できない。対してPoolでは、ウォレットと呼ばれる資金決済法で定められた前払式支払手段を用いた。これはいわゆる電子マネーの仕組みだ。また商品券やプリペイドカードなどもこれに当たる。
ただし前払式支払手段では、預かった資金の2分の1以上を法務局に供託する必要があり、運用が行えない。そこでPoolが活用したのが、第二種金融商品取引業登録に基づいたファンド組成だ。
これは匿名組合というファンドを作り、そこに投資家が資金を拠出。ファンドから投資を行うことで、リターンを投資家に返すという仕組みだ。いわゆる貸付型クラウドファンディングでも一般的に使われている仕組みである。
Poolのユーザーは、ウォレットにチャージした資金を使って内部的にファンドに投資が可能となっている。ファンドは、事業への投資を行い、運用成果を投資したユーザーに返すという流れだ。ファンドの償還期限は2カ月で、ユーザーは資金を自身の銀行口座に戻すか、再投資するかを選択できる。
そして3つ目のポイントがクレジットカードだ。通常クレジットカードは、利用者の勤続状況や家族構成などから与信を行い、利用限度額を設定する。そして利用された金額を合計して、翌月末などに口座から引き落とす仕組みを取る。一方Poolでは、通常の与信を行わず、チャージされた合計金額分の与信を設定する。
つまり、チャージした分しか利用できないわけで、ここだけ見るとプリペイドカードと同じだ。ではなぜクレジットカードを用いたのか。プリペイドカードは利用すると即座に残高から差し引かれるが、クレジットカードならば、支払いまでの期間が開くため、チャージした資金の運用が可能になる。具体的には月間で利用額を集計し、支払いは翌月末となる。
なお、クレジットカード支払日時点で、支払い額がウォレット残高を上回る場合に限り、カンムがファンドの持ち分を買い取る形で支払いに充てられる。
このような仕組みで、ユーザーから見ると、チャージした資金を投資に回すことで年利1%のリターンが期待でき、かつその資金を実質的にカードでも利用できるという環境が整ったわけだ。
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