カンムPoolの驚異の仕組み クレジットなのに事前チャージ、チャージ金額から投資リターン:金融ディスラプション(3/4 ページ)
カンムの新サービスPoolの最大の特徴は、クレジットカードでありながら事前チャージを必要とし、チャージした金額に対して1%のリターンを期待できることだ。これを実現するために、複数法を組み合わせることで、擬似的に銀行ライクなサービスを実現した。その仕組とは?
カンムの狙いは資金調達コスト
ここまで複雑な仕組みにするメリットがあるのだろうか? と思うかもしれない。実はカンムにはこれを実現する切迫するニーズがあった。絶好調のバンドルカード事業における運転資金需要だ。
バンドルカードはプリペイドカードだが、2018年4月から後払いサービス「『ポチっと』チャージ」を提供している。これはユーザーが5万円までチャージして買い物などに利用でき、チャージした分の代金は翌月末までに支払えばいいというものだ。バンドルカードは、若年層などを中心に500万ダウンロードに至っており、後払い需要が大きく高まっていた。
チャージから支払いまでの間、「数十億円の運転資金が必要になっている」と八巻氏は言う。この運転資金を調達したいというのが、Pool開発の出発点にあった。
実は、Poolのファンドの投資先は全額カンムのバンドルカード事業だ。Poolで集めた資金を、自社の別事業の運転資金に活用する。いわゆる自己募集の形であり、これにより投資リスクをコントロール下に置いている。
『ポチっと』チャージは、「後払いチャージ(Charge Now、Pay Later)」と呼ばれる仕組み。通常の後払いは、加盟店舗で品物を買うと後払い決済事業者がユーザーに代わり代金を支払い、ユーザーは後払い決済事業者に後ほど返済を行う流れになっている。後払いチャージでは「チャージ代金(バリュー)」を品物とみなして、その購入代金を後払いする仕組みだ。カンムは後払い決済事業者から見て加盟店に当たる。
カンム側は加盟店の扱いなので、後払い決済事業者からの入金までの間、一時的に資金を立て替えなくてはならないが、ユーザーが返済を行うのは後払い決済事業者だ。つまり貸し倒れリスクは後払い決済事業者が取っており、カンム側から見ると「後払い決済事業者から入金はされるので、(ファンドからの投資の)リスクは貸し倒れリスクから隔離され、最小化できている」(八巻氏)形になる。
チャージされたお金を使い、ユーザーがバンドルカードを使って決済した際に、店舗など加盟店から得る加盟店手数料がカンムの収益となる。ここからファンドを介してPoolでの投資のリターンに充てられる。
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