上場企業の中計から読み解く下期のビジネスキーワード 食料品「サステナビリティ」、銀行「地域社会」:注目すべき3つの分野(4/5 ページ)
中期経営計画書は、今後の経営方針を投資家に向けてアピールする側面が強いため、その年のトレンドをより反映しやすい。2022年度後半の注目キーワード、経営トレンドを予測した。大きくいえば、投資家がサステナビリティを重視するようになっている。
業界別・ホットワードから見る事業の最新動向
次に、業界ごとの動向を見てみよう。食料品では、「サステナビリティ」が登場数1位になっている。増減率が215%と高い理由として、特定の企業が数多く使っていることが挙げられるという。「サステナビリティ」の最多使用は森永乳業の55回だ。
「森永乳業はプラスチックの削減やTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応などを掲げてサステナビリティへの配慮を示しています。食を通じた健康への貢献はもちろんのこと、環境や資源にも配慮していくことが、食品業界のトレンドになっていると考えられます」
3位には「健康」が入っており、森永乳業が80回、ダイドーが20回使用している。
「両社とも中計の中で『健康』が最多登場ワードとなっています。高齢化の進展や、コロナ禍を背景とした世界的な健康意識のさらなる高まりなどを背景に、健康食品に注力する方針となっています。価格競争が厳しくなったり、原材料費が高騰する中で、単に価格を上げるだけでは消費者は買ってくれません。5位に『付加価値』が入っていることからも、プラスα(アルファ)の価値を付加することで成長していこうという意識がうかがえます」
電気・ガス業では、「カーボンニュートラル」「省エネルギー」「脱炭素」がトップ3を占めた。
「この業界はCO2排出量のインパクトが最も大きいため、サステナビリティ関連のワードが上位を占めています。5位に入っている『再生可能エネルギー』もその1つ。化石燃料以外のエネルギー開発への注力を表明する企業も多くなっています」
精密機器の業界でも、「サステナビリティ」が3位で149%の伸びを示している。
「精密機器も装置産業ですのでサステナビリティは重要なテーマと言えます。そのための取り組みの1つとして、低炭素電力(グリーン電力)の導入を進める企業が増えています。精密機器で特徴的なワードとしては、5位の『自動化』が挙げられます。これには2つの意味があります。1つは自社工場の自動化を方針に掲げる企業、もう1つはFA工作機械・部品を提供する側として、自動化領域の事業拡大を方針に掲げる企業で、いずれも増えています」
銀行業では1位に「課題解決」、2位に「デジタル化」、5位に「地域社会」が入った。
「長引く低金利環境や直接金融の増加などで、単なる融資や資金運用だけでは収益を上げにくくなっている中、地域のネットワークを生かして顧客の課題解決に取り組む銀行が増えています。
特に地方銀行にとっては、地域社会の発展は自行の存続に関わりますから、地元企業の成長支援を通じた地域の発展を掲げる傾向が高まっています。その一環として、行内業務のデジタル化に加えて、銀行が地域におけるDXの旗振り役となって、顧客のデジタル化支援を掲げるケースが増えています」
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