部下の「それパワハラですよ」におびえる上司たち 指導や指示との違いをどう考える?:あれもこれもハラスメント(2/4 ページ)
「部下に仕事を指示したら『私の仕事ではありません。それってパワハラですよ』と言われてから、何も言えなくなってしまいました」――このように相談してきたのは中小企業の営業部長の藤川さん(仮名、40歳男性)でした。
業務の適正な範囲とは?
“業務の適正な範囲”とは業務上指揮監督や教育指導において、必要かつ合理的と認められる範囲を指します。このように書かれると「何となく分かったような気はするけどそれが分からないんだよね」と思われた方も多いのではないでしょうか? そこで、もう少し砕けた言い方をすると「世間一般的に考えて、それは業務指導の範囲だよね」といったところでしょう。
私自身も、顧問先から「これってパワハラになりますか?」と質問され、即答できないことが少なからずあります。こういうケースでは、大変申し訳ないのですが「ご自身は客観的にどう思われますか?」「他の社員の皆さんはどう感じていますか?」と逆質問をして、その会社の適正な範囲を参考にアドバイスをします。
もちろん、会社の文化や風土がそもそも“世間一般的”の感覚から外れていれば問題外なのは言うまでもありません。なお、私の言う“世間一般的”は他社事例を参考に考えることが多いです。
これはパワハラなのか?
「パワハラと言われるのが怖くて、何も言えないです」
藤川さんのように考えてしまう管理職は少なくありません。これはやはり、極端な情報があふれかえっていることが原因の1つでしょう。
エージェント(東京都渋谷区)が公表したハラスメントカオスマップ2021年版では、実に47項目ものハラスメントが掲載されています。要するに、何かしら自分の意にそぐわないことがあれば「それって○○ハラですよね」と言い、そして、言われた方は「そうなのかな?」と思考停止してしまうのです。
こんな事例がありました。ある飲食業での話です。男性店長が学生アルバイトの肩をたたき、「テーブル片付けといて」と指示したところ、「それはハラスメントですよ」と言われてしまい悩んでいました。
店長に肩をたたいた経緯を聞いてみると、「声がけしたけど気が付かなかったので肩をたたきました。ホールで大声を出すよりは良いと思ったのですが……」とのことでした。当たり前ですが、業務上必要な行為であればハラスメントにはなりません。その学生アルバイトに「どの辺がハラスメントだと思ったのか?」と確認してみたところ、「触る行為はハラスメントだと学校で習った」と言っていました。
みなさんはこの事例を聞いてどう思いますか?
関連記事
- 「仕事を調整したのに部下の残業が減りません」 働き方を観察して見えた意外な事実
「これだけ仕事を減らしたのになんで残業時間が変わらないんだ?」――狐につままれたかのようにつぶやいたのは、4月に総務部長に就任した木根さん(仮名、49歳男性)です。就任後最初の課題として取り組んだのは、部下の町本さん(仮名、32歳男性)の残業時間の削減でした。就任後にいろいろと試みたものの、思ったほどの効果が上がらずお手上げ状態になってしまったそうです。 - 部下を叱るとき、「絶対に使ってはいけない」NGワードを教えてください
部下を叱るときに、つい厳しい口調で言ってしまうので、不適切な発言が入っていないか心配です。叱るときに「絶対に言ってはいけない」言葉を教えてください。 - 仕事はデキるが、部下はげっそり──「精神的パワハラ」を繰り返す上司はなぜ生まれるのか?
「舌打ちされたことがショックで1日中仕事になりませんでした」――こう話すのは、中堅メーカーの総務部に勤める黒川さん(仮名、22歳女性)です。黒川さんは大学を卒業後、新卒として現在の会社へ就職しました。 - 上司に大激怒される「悪い残業」と評価される「良い残業」 その違いとは?
「残業しただけなのに怒られるなんて思ってもみなかったです」――納得がいかないと愚痴をこぼすのは、とある出版社で営業をしている佐藤さん(仮名、30歳男性)です。 - 「手に負えませんよ」 アイデアがない残業だらけの会社で起きた「時短」の裏側
「働き方改革」がメディアに登場することが多くなるにつれ、長時間労働の是正に本腰を入れ始める会社が増えていきました。それと同時に、人材を確保するためには、働く環境の改善に取り組まざるを得なくなったことも大きな要因でした。時短に向けた取り組みは各社さまざまです。その一方で、「時短はしたいが特にアイディアがない」なんていう会社があるのも事実です。そんな会社ではこんなことが起こっています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.