発達障害、マンガで分かりやすく 札幌市「虎の巻」、10年経た今も読まれ続ける理由:生きやすい社会目指し(1/2 ページ)
札幌市が発行する発達障害の当事者への支援ポイントをまとめた「虎の巻シリーズ」。シリーズ1作目の「職場編」は2010年に発行されたが、今もSNSでたびたび話題になるなど、長く支持されている。どのような内容なのか。
近年、耳にすることが増えた「発達障害」。コミュニケーションや他者との付き合いが苦手なことから、仕事や生活上で生きづらさを感じる当事者が多いと言われている。そんな当事者や支援者から高く評価されているのが、札幌市が発行する当事者への支援ポイントをまとめた「虎の巻シリーズ」だ。シリーズ1作目の「職場編」は2010年に発行されたが、今もSNSでたびたび話題になるなど、長く支持されている。どのような内容なのか。
「てきとうにこのクリーム塗っといて」「おいおいっ クリーム塗りすぎだよ」
冊子にマンガ風に紹介されているのは、あるパン店でのひとコマ。自閉症と診断を受けている「虎夫さん」は、職人からパンにクリームを塗るよう指示を受けたが、加減が分からず、塗りすぎて怒られてしまう。
冊子では「適当に」「ちゃんと」「しっかり」などの曖昧(あいまい)な言葉が当事者は苦手だと説明し、「こうやって塗ってください」と見本を見せることで完成度がアップするとイラストで紹介する。
札幌市障がい福祉課によると、「職場編」を発行したのは2010年3月。発達障害の当事者家族や支援者から「成人期の就労支援に使える参考書がほしい」との要望を受け、09年にプロジェクトチームを発足させた。
当時、書店に並ぶ発達障害に関する本は、小児や学齢期の支援に関するものがほとんどで、成人期のものはあまりなかったという。
こうして、実際に当事者が体験したできごとなども参考にしてまとめたのが「職場で使える『虎の巻』」だ。虎夫さんのほか、事務所に就職したアスペルガー症候群の診断を受けている「巻子さん」の2人のキャラクターが登場し、発達障害の特性と、対人関係において起こりがちな思いの違いや対応法について、イラストを用いて視覚的に紹介している。
発達障害はどのような障害なのか
発達障害とは、どのような障害なのか。厚生労働省は「生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態」と説明する。
発達障害には、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害)、チック症、吃音などが含まれる。
例えば、自閉スペクトラム症では、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちを読み取ったりすることを苦手とするほか、特定のことに強いこだわりを示すといった特性がある。
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