発達障害、マンガで分かりやすく 札幌市「虎の巻」、10年経た今も読まれ続ける理由:生きやすい社会目指し(2/2 ページ)
札幌市が発行する発達障害の当事者への支援ポイントをまとめた「虎の巻シリーズ」。シリーズ1作目の「職場編」は2010年に発行されたが、今もSNSでたびたび話題になるなど、長く支持されている。どのような内容なのか。
注意欠如・多動症(ADHD)では、発達年齢に比べて落ち着きがない、待つことができない、注意が持続しにくい、作業にミスが多いといった特性がある。
発達障害は、生まれつき脳の働き方に違いがある点が共通し、同じ障害でも特性の現れ方に個人差があったり、いくつかの発達障害をあわせ持ったりすることもあるという。
厚労省の16年の調査では、医師から発達障害と診断された人は国内で48万1000人に上ると推計された。診断を受けていない発達障害の当事者も相当の人数がいる可能性が指摘されている。
生きづらさ減らすため
コミュニケーションが苦手でうまく人間関係を築くことができず、生きづらさを抱くことが多いとされる発達障害の当事者。一方で、得意分野では能力を発揮できる人も多いとされ、当事者が最大限の能力を発揮できるような周囲のサポートが重要になってくる。
札幌市の「虎の巻」では、「向き不向き――得意なことなら達人に」という項目を立てている。当事者に多くの仕事を任せると変化に対応できずミスが増えるが、1つの仕事を継続してもらうことで集中力がアップし、正確な仕事ができるようになったというケースを紹介している。
冊子の冒頭には、“The undiscovered workforce”(未発見の労働力)という言葉を紹介している。全英自閉症協会が発行した就労ガイダンスの名称だといい、「発達障害のある人たちの豊かな労働力が埋もれていることに誰も気づいていない」という意味だという。
当事者の豊かな労働力を見つけ、その能力を正しく評価できる社会を目指して編まれた虎の巻。発行から10年以上が経った現在も、全国の企業や就労関係の事業所、自治体などから問い合わせがあるほか、直近でもSNSで投稿され、「分かりやすい」と広く拡散された。
札幌市障がい福祉課の東如恵さんは「いまも話題に上り興味を持ってもらえるのは大変うれしいです」と話す。一方で、「SNS投稿を見て思うのは、当事者や周りの人が感じている生きづらさは、10年経ってもあまり変わっていないということ。一層の理解促進に努めないといけないと改めて思いました」と話す。
札幌市では「職場編」の発行以降、「暮らし編」「学校編」「続・学校編」「子育て編」も作成し、虎の巻シリーズは5作に上る。東さんは「冊子に載せている事例はあくまで一例。発達障害について知り、当事者と周囲の人がよい関わりを築ける方法を考えてもらえるきっかけになったらうれしい」としている。虎の巻シリーズは札幌市の公式Webサイトで見ることができる。
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