マックは「客数」が減って、ミスドは「販売数量」が減る!? 同じ値上げなのに、影響が異なるワケ:価格設定の謎(5/5 ページ)
10月の値上げラッシュが家計に影響を与えているが、筆者はいい値上げと悪い値上げがあると指摘する。価格設定の知られざる仕組みを、身近な外食チェーンで考察する。
プライスマーチャンダイジングに命をかけろ!!
このように、企業の設定する価格というものは、常にお客さんの予算帯を考えて設定しなければならない非常に重要なものです。しかし、各企業は原価積み上げ式での価格設定になっていることが今も多いように感じます。原価積み上げ式とは、その商品を作るために必要な原価を足していって、必要な利益をのせて価格設定をするという方式です。
分かりやすいやり方ですが、単純にこれをやっていくとお客さんの予算とかけ離れることもでてきます。特に今は原料の仕入れ価格が何パーセント上昇したとか、水道光熱費、物流費、家賃、人件費が上がったから旧来価格では吸収できなくなったのでやむを得ず……という値上げがほとんどです。
これはこれで仕方がない部分もあるのですが、お客さんの感覚からするとズレてしまいます。お客さんはそんなこと関係ないのです。結局、お客さんは自分たちの支払える予算帯に合っているかどうか、この企業はいくらの価格で提供してくれるかを見ています。
この30年間の日本はデフレが続き、価格はどんどん安くなり、世界でもこれだけ物価の安い国はないといわれるほどになりました。そうした点を踏まえると、現在の値上げラッシュは、企業にとっては本当の付加価値で勝負するために必要な値上げをする時期といえます。私はその意味で、値上げは賛成です。
人件費も上げていかねばならない日本には、ある程度の値上げをしていかないと、適正な人件費も支払えませんし、付加価値を生み出す行動がとれないからです。
しかし、単なる原価積み上げでの価格設定はお客さんの予算帯とズレていき、お客さんは購入しなくなります。それが怖いのです。
企業としては今後も価格設定の見直しにより、値上げせざるを得ないタイミングが何度かあるでしょう。その際に、この価格は本当に自社のお客さんにとって適正な価格といえるのだろうか、ということを必ず議論して、適正価格を決めてほしいと思います。それが本当の顧客満足につながります。
全てのお客さんは予算を持っています。
それを忘れないように、企業の重要戦略にプライスMDをおくべきであり、価格設定に命がけになるべきなのです。
著者プロフィール
岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)
ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント
1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。
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