残念ながら、「インバウンド需要は急回復する」と考えるのが危険な理由:入国者数の制限が撤廃(4/4 ページ)
日本では、1日当たりの入国者数制限を10月11日より撤廃した。インバウンド需要の回復を期待する声も大きい。しかし、特需に頼るのは危険だと筆者は主張する。
事業ポートフォリオをどう考える?
次の表をご覧ください。これは、縦軸が市場・顧客、横軸が商品・事業です。従来の商品を新しい顧客に売ることを強化する場合は、その企業の戦略は左下に位置します。既存の商品を既存の顧客にもっと販売していこうとする方向は左上です。インバウンドやオフィス顧客を拡大するというのは、この左側の軸に位置していることになります。
しかしコロナでその見込みが大きく崩れ、業績が悪化する企業が続出しました。
スーツを販売する企業などは、既存顧客がオフィスターゲットであるため、図の左上に位置します。しかし、人口減、物価の高騰、上がらない賃金という市場においては、既存顧客からさらにお金を支払ってもらうのは困難だと考えられます。
旧来と同じ事業・同じ商品でターゲットを増やすことを戦略の軸として、それがインバウンドやオフィスなど外部要因の動向によって左右される場合、大変不確定な事業展開にならざるを得ません。そこで、コロナによって、図の象限の右側(新規事業・商品を、既存市場や新規市場に投入する)の戦略の重要性が高まっています。実際に、その戦略を実行に移す企業も増えました。
しかし、コロナでも揺るがない業績を達成した企業は、以前から右側の対策を積極的に行っていた傾向にあります。日本の人口減少、デフレ、市場が飽和して衰退期に入っている産業が多い環境においては、従来の商品・サービスのまま顧客をより多く呼び込もうと思っても、大きな伸びは望めません。だからこそ、五輪のような特需頼みになってしまうのです。
戦略の軸を右側に置いていた場合、新しい事業や商品を作り、それによって新しい顧客や収益を生み出す、もしくは既存の顧客が他社で使っていたお金を自社で使ってもらうことにつながります。
日本の市場は、事業ポートフォリオの再編が求められてきたのです。それがコロナによって市場が急激に変化し再編待ったなしの様相となりました。事業の真の強さを試されたといっても過言ではありません。
コロナ前に戻るという淡い期待をするのではなく、コロナのようなことが発生しても揺るがない事業ポートフォリオをどのように構築するか、外部要因に依存しない強固なモデルをどのように作るか、今後も継続してこの点を推進していくことが重要であると感じます。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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