残念ながら、「インバウンド需要は急回復する」と考えるのが危険な理由:入国者数の制限が撤廃(3/4 ページ)
日本では、1日当たりの入国者数制限を10月11日より撤廃した。インバウンド需要の回復を期待する声も大きい。しかし、特需に頼るのは危険だと筆者は主張する。
特需に依存するビジネスモデルは危険
コロナは試練だけではなく、さまざまな教訓も与えてくれました。そのひとつは、インバウンドなどの特需に依存しすぎないビジネスを設計するのが肝要だということです。
インバウンドに期待してきた産業は多くあります。一方、コロナが発生し、想定していたインバウンド効果が得られなくても業績が減退しない企業もありました。それは、インバウンドに依存しすぎてはいなかった点と、コロナというマイナス影響があったとしても柔軟かつ迅速に対応する組織力があったことが大きく影響しているのではないでしょうか。
例えば、SaaS企業はコロナの影響を大きく受けませんでした。コロナであってもシステムを止めるわけにはいかず、年間契約というストック型の収益モデルも安定性を発揮しました。
また、業務スーパーを展開する神戸物産は小売業各社がコロナの影響を受ける中、売り上げ、営業利益、営業利益率ともに上昇し続けました。これはコロナ発生以前から、国内需要対応型であったこと、日常の必需品として非常時でも顧客離れを起こさず、低価格で独自性のあるPB品が強く支持されていたことが要因として挙げられます。特需のようなものがないと業績が不振になるようでは、事業展開自体が不安定だともいえます。
オフィスマーケットはもとに戻るのか?
次に、インバウンド以外で、特にコロナの影響を受けたオフィスマーケットの状況を見てみましょう。
コロナに関する対策の整備とワクチンの普及、国民の意識の変化などを鑑みると、インバウンドだけでなく、オフィスの出社率の回復が見込まれます。
内閣府の調査によると、全国の平均出社率は21年10月時点では67.8%、22年に入って70%ほどに回復し、今後3〜5%の範囲でさらに上昇することが予想されます。それでもコロナ前水準はいえず、19年対比マイナス15%ほどです。インバウンドマーケットよりは回復傾向にありますが、出社することを前提にしたオフィス向けビジネスは、旧来よりもターゲットボリュームが増えることはないと捉えなくてはなりません。21年から増えているという数字に目を奪われ、ポジティブに捉えるのはどうでしょうか。インバウンドとオフィスマーケットの回復要素だけでは、自社目標数値を達成するには足りないという危機意識を持つ必要があります。
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