投資や仮想通貨などで広がる「モノなしマルチ商法」 ハマった社員が社内勧誘、会社はどう対応すべき?:被害相談件数は増加傾向に(2/3 ページ)
消費者庁は、日本アムウェイ合同会社に対して勧誘などの一部業務を6カ月間停止するように命じました。若年層を中心にマルチ商法にハマる人が増えていることが背景にありそうです。社員がマルチ商法にハマり社内で勧誘行為をしていたら、会社はどのように対応すべきでしょうか?
マルチ商法で自殺者が
理由の一つとして、20代を中心にマルチ商法の被害が広がっていることが推測できます。消費者庁は、ここ数年で「モノなしマルチ商法」という従来のような健康食品や化粧品などの「商品」ではなく、投資や暗号通貨、副業などの情報を扱うマルチ商法に関する被害が広がっていると警鐘を鳴らしています。モノなしマルチ商法の相談件数における20代の割合(2019年)は、10年の3倍以上に上ります。
20年10月には女子大学生が、同級生から紹介された男性に「暗号資産」の運用をうたう投資に誘われ、150万円の借金を背負ったことを苦にして自殺するという痛ましい事件が起こりました。モノなしマルチ商法のスキームは、モノありマルチと同じです。会員に登録する際に費用が発生し、友人や会社の同僚などを勧誘して成功した場合に成功報酬が入ります。
勧誘に成功すればよいのですが、借金を背負う人もいます。モノありマルチと比べて、投資や自己啓発、副業などをうたっているため、マルチ商法かどうか判別しにくい傾向があります。こうした状況に歯止めをかけるため、厳しい処分が下された可能性が考えられます。
マルチ商法にハマる若者が増える理由
20代を中心に若い世代がマルチ商法にハマる理由を3つの観点から解説していきます。1つは、お金に関する不安です。日本人の給料は横ばいとなっており、物価の上昇に追いついていない状況です。年功序列型の賃金制度を廃止する会社もあるものの、まだまだ年功序列型の賃金体系を採用している会社は多いため、仕事量に対して十分な報酬をもらえていないと不満を覚える若手社員は多いでしょう。
2つめは、インスタグラムなどのSNSで金銭的に成功している若者の投稿を目にする機会が増えたことです。高級マンションの上層階に住み、ハイブランドを身に付け、高額な飲食店での食事をし、海外旅行に行った写真などを投稿し、自由で余裕のある理想の暮らしを演出するのは、マルチ商法会員がよくやる手法です。
3つめは、従来の電話やメールなどの手段と比べて、SNSのDM機能などにより気軽に勧誘がしやすくなったことです。これは2つめと組み合わせてよく使われる手段で、投稿に対して「いいね」をした人やフォロワーに対して勧誘のDMを送るやり方です。
22年4月1日より、成年年齢が18歳に引き下げられました。成年になると、親などの法定代理人の同意なく契約ができます。その反面、未成年者取消権(民法では、未成年者が法定代理人の同意を得ずに契約した場合、原則として契約を取り消すことができるとされています)の効力がなくなるため、一度締結した契約は、原則として取り消せません。
未成年だけでなく、就職や進学のために地方から引っ越ししてきた人などもマルチ商法のターゲットとして狙われる恐れがあります。
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