金融所得課税率を上げるなら、配当だけを対象にすべし:さもしいバラマキ根性(3/3 ページ)
「1億円の壁」に対する不公平感をベースに、再び金融所得への課税強化の議論が高まっている。まずは人気取りのためのバラマキを止めることが何より先決であるが、財政再建のために本当に必要なら聖域扱いすべきでもない。とはいえ……。
もう一つのオプションは、同じ金融資産から得られる所得の中でも、配当に対する税率を上げるというものだ。これも金融市場、特に株式市場に対する影響は確実にあるが、キャピタルゲインに対する税率アップに比べ、そのネガティブ・インパクトは格段に低い。
なぜなら日本の株式市場における定常的国内参加者の多くがキャピタルゲイン狙いであり、海外市場参加者もそうした特性を知った上で投資をしているからである。つまり仮に日本で株式の配当に対する課税を強化しても、市場参加者は(ブーブーと文句を言うだろうが)日本市場を離脱することはないという推論が導き出されるのだ。
この「配当所得にだけ課税を強化」というやり方は実務的に成り立つのと、「金融所得全般に対して課税を強化」よりはましなので、オプションとして提示している。決して理念的に褒められるものではないことは言い添えておきたい。
なぜなら企業は毎期利益を確定後、その利益に対し課税された税金(国税、県民税)を収めている。その残った税引き後利益から株主に対し配当を行うのだ。すなわち配当所得というのは国と自治体に対し既に税金を支払った残りを株主に還元しているものであり、配当所得課税というものはその残りに課税している時点でそもそも「税の二重取り」なのだ。
その二重課税の税率をさらに強化するというのは本来あってはならないことだ。もしそこまで手を着けなければいけないのであれば、政治家と官僚はまずは財政の無駄遣いを徹底的に排した上で、それでもなお足らない部分については国民から一時的に拝借するくらいの気構えで財政再建に血道を上げていただきたい。それくらい税金というのは重いものだ。
「自分の財布じゃないから、有権者受けを考えて気前よく使ってしまえ」というさもしいバラマキ根性はいい加減、止めて欲しい。 (日沖 博道)
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