金融所得課税率を上げるなら、配当だけを対象にすべし:さもしいバラマキ根性(2/3 ページ)
「1億円の壁」に対する不公平感をベースに、再び金融所得への課税強化の議論が高まっている。まずは人気取りのためのバラマキを止めることが何より先決であるが、財政再建のために本当に必要なら聖域扱いすべきでもない。とはいえ……。
おのずから課税強化のターゲットは、世の中の嫉妬を一身に受け止めてくれる富裕層に定まろう。しかもいつでも海外に資産を移せるベンチャー成金ではなく、日本に根差し(子・孫・友人が日本に在住、不動産資産も日本、など)、今さら海外移住などは面倒くさい高齢者である。日本の金融資産の圧倒的大半はそうした高齢の富裕層およびそれに準ずる「余裕のある資産家」が保有している。
こうした状況を踏まえ、今また金融所得への課税強化が政治的アジェンダのリストに復活しつつあるようだ。
しかしここで言っておきたい。金融所得だからと一律に課税強化すべきではない。なぜなら金融資産の種類によって、投資家の保有リスクと市場におけるインパクトが全く違うからだ。
端的に言って、金融資産を譲渡した結果得られる「キャピタルゲイン」については今の一律20%を維持するというのは妥当ではないか。
もしこれをそれなりに高くしようとすると、国内の投資家からは「大幅な値下がりリスクを背負って投資した結果、ようやく得られたキャピタルゲインだ。毎月確実に得られる給与所得とは違う。もしこれに課税強化するなら、本気で海外市場への投資にシフトして国内市場は無視する」と猛反発され、市場自体をボイコットされかねない。そうした動きを見越して海外投資家も日本市場を見放す可能性が高い。
すると日本の株式市場に対する海外からの投資が極端に減り(数十年前の小さなローカル市場に立ち戻ることになり)、日本に落ちるお金は減り、しかも市場の需給バランス機能はほとんど死に絶えるだろう。当然、日本の株式市場で働く人たちの雇用も一挙に蒸発する。これはキャピタルゲイン課税強化で得られる税収増を遥かに上回るネガティブ・インパクトを日本経済に与える公算が高い。こんな怖い博打を政府には打って欲しくない。
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