男性育休の“社内第1号” いつから・どれくらい取得がふさわしい? 「正直迷惑」の声にめげず、準備すべきこと:連載「情報戦を制す人事」(2/4 ページ)
社内で初めての男性の育休取得希望者に対応することになったとき、人事はどうすれば良いのでしょうか。「正直迷惑」「人がいないのに」の声にめげず、男性育休をスタンダードな選択肢の一つとして浸透させるためにできることを紹介します。
【制度浸透のために人事が取るべきアクション】
経営層・管理職の理解を得る
「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣から認定される「くるみん」「プラチナくるみん」など、評価を可視化することで企業のブランディングを強化し、採用に好影響があることを訴求することで、経営層に味方になってもらいましょう。
当社が22年6月15日〜7月8日に企業人事担当者に行った調査でも、半数以上の企業経営層は「積極的に取得して欲しい」と回答しています。
特に現場で仕事を回すことが多い製造業などは、工員の転職・離職防止に非常に気を付けており、労働人口不足という問題の中で既存従業員を維持するということは重要なテーマです。
また、管理職において特に注意しなければならないのは不利益な取り扱いとハラスメントです。育休の申し出や取得を元にした解雇や退職勧告のほか、時給従業員への雇用形態の変更は禁止されています。上司や同僚からの下記のような発言を防止することが、事業主に対して義務付けられています。
- 「男のくせに育児休業を取るなんてあり得ない」
- 「迷惑だ。自分なら取得しない。あなたもそうすべき」
- 「〇〇さんが育休中だから、あなたが取得するのは少し待って」
育休制度に関する研修など制度説明を行う
22年4月の法改正で既に全体周知が義務化されています。社内ポータルサイトや食堂の掲示板に、A4サイズ1枚程度の簡単な説明を掲示するのみという企業も多いようですが、より積極的な推進策として、研修のような形で本人や同僚も含めて育休に関して実感が持てるようにできると良いでしょう。
推進策の一つとしては、集合型研修やeラーニングを提供している企業のサービスを活用も考えられます。例えば広島県では、無料で講師を派遣する「出前講座」を行っています。その他、厚生労働省のイクメンプロジェクトにはほぼそのまま利用可能な研修資料や動画が掲載されており、育休取得希望者以外にも管理職用などさまざまな立場の人向けのコンテンツが充実しています。
また無料の資料で最もまとまった情報が記載されているのが厚生労働省『父親の仕事と育児両立読本〜ワーク・ライフ・バランス ガイド〜(令和3年度版)』です。経営者は人事部門はもちろん、管理職や同僚、本人が読むべき情報が1冊に集約されています。
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