男性育休の“社内第1号” いつから・どれくらい取得がふさわしい? 「正直迷惑」の声にめげず、準備すべきこと:連載「情報戦を制す人事」(3/4 ページ)
社内で初めての男性の育休取得希望者に対応することになったとき、人事はどうすれば良いのでしょうか。「正直迷惑」「人がいないのに」の声にめげず、男性育休をスタンダードな選択肢の一つとして浸透させるためにできることを紹介します。
現場を支援しつつ業務改善や他の人事制度の作成・活用をする
スキル管理と「多能工」化
「誰がどの業務ができるのか(製造業の現場なら、製造ラインに入れるのか)」「一人で達成可能か/補助があれば達成可能か」を見える化し、誰かが抜けた時に誰がカバーできるのか、カバーする人材確保のため育成の必要がある業務があるかを洗い出します。
製造業ではシンプルに模造紙を壁に貼っていたり、人事でもこのような表を作成して部員の教育を行っていたりします。また、複数のスキルを持った人材を「多能工」と呼びます。
男性育休に限らず、事故や疾病、看護・介護などで予期せぬ欠員が生じた場合の備えとして、このようなスキル管理と「多能工化」を普段から進めていくことが重要です。
社内公募と社内副業
1カ月程度であれば派遣従業員や現行従業員の残業で乗り切るという手段もありますが、コストも問題や(本来は無用な)「迷惑を掛けた/掛けられた」という心情の問題があります。
これに関しては、ジョブローテーションほど重くはない「社内公募」「社内副業」の制度があると、社内のリソースを活用できます。キャリア育成、キャリア自律、副業制度、ノウハウ横展開、標準化などの他の人事テーマとの親和性も高い方法です。
イクボス10の実践をあらためて部署全体でやってみる
普段から取り組んでいるとは思いますが、あらためて業務改善として以下のような標語を掲げて取り組めるように支援しましょう。10個のうちどれか1つは改善余地があるものがあるはずです。また、閑散期がある部署であれば、その間に集中的に見直すと良いでしょう。
【次につながる1例目にするために】
せっかく「第1号」が出たからには、次に続く人のためにできることをしておきましょう。
業務整理や引き継ぎの記録を残す
単に引き継ぎをするだけでなく、部署全体として「顧客や他部署からのインプット」「部署内での処理」「顧客や他部署へのアウトプット」の3つの観点から俯瞰的に見直しをすると良いでしょう。必然的に管理職の力が必要になりますので、業務改善を歓迎する意味でも人事や経営陣からの心理的な後押しが加わると進めやすいです。
社内外への広報活動の準備をする
あくまで本人が了承してくれたらの話ですが、社内報や採用案内ページへの掲載の他、復帰後に研修へ登壇してもらうなど、本人の協力を得てできることは多くあります。本人及び上司にあらかじめ協力のお願いをした上で広報担当や採用担当と連携できると良いでしょう。
特に社内報への掲載や研修への登壇など2例目以降につながる活動は、22年4月の法改正への対応をさらに進めることにつながります。
できれば3カ月など長く取得できるよう、現場と調整する
長期間取得した事例ができれば、男性育休の活用が想像の域を出なかった頃よりも理解が進みやすく、2例目以降に続きやすくなります。
産後1週間で病院から帰宅しますが、母体の回復や新生活に慣れるため、基本的に産後1〜2カ月程度までは母子ともに外出を控えるのが一般的です。つまりその間の買い物や洗濯、料理などは夫が担うことになります。また、3時間ごとの授乳やオムツ替えや「背中スイッチ」と呼ばれる寝かしつけの困難などが原因で十分な睡眠を取れず、夫婦ともに産後うつになりやすいです。
もちろん個人差はあるのですが、このような「育休で経験した実感」をきちんと伝えていかなければ、他の人は当事者の困りごとを知ることはできません。従って、2例目以降の希望者が育休に入り、育児を含めた家庭のマネジメントができるように先の“体験者”となれるよう人事が協力できると良いです。
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