産業医が警告! 優秀社員の“突然の休職”を引き起こす、テレワークの意外な注意点とは?:どうやって防ぐ?(3/6 ページ)
テレワークには「やりすぎ注意」な一面があります。放置すると、優秀な社員が突然体調を崩して休職するなど、企業にとっても大きなダメージにつながります。どうしたら、こうしたリスクを減らせるのでしょうか。産業医の志村哲祥氏が解説します。
「フルリモート」で狂う体内時計
一方で、冒頭でご紹介したように、テレワークは「やりすぎ注意」。リスクが高い働き方の1つが「フルリモート」です。
われわれ(東京医科大学)の研究では、リモートワークの頻度が増え、特にフルリモートになると、 睡眠と生活のリズムが狂いやすく、体内時計が乱れ、夜型化しやすいことが明らかになっています。
体内時計に影響を与える要素の1つに、食事の時間があります。「腹時計」という言葉もありますが、毎日同じ時間に規則的にご飯を食べることで、体内時計を整える役割があります。しかしリモートワークでは、昼休憩の時間もバラバラになってしまい、つい「キリがいいところまで」と不規則になってしまうことがあります。
こうした「食」の観点から、リスクの低減に取り組んでいる企業を紹介します。置き型社食「オフィスおかん」などを提供するOKANです。
OKANでは、リモートワークでのランチタイムの安定化も兼ねて「オンラインランチ」を定期開催しています。
OKANの中村星斗氏によると、鍵は「午後1時の会議」が予定されている日とのこと。中村氏は「午後1時に会議が予定されていると、その準備を優先し、食の重要性を理解していても、ついランチをスキップしたり、簡単に済ませたりしてしまいがちです。そこで、スケジュールにお昼の時間を確保しておいてもらったり、特にコロナ初期ではオンラインランチを開催したりしてきました」と説明します。
リモートワーク社員のメンタルヘルスのために、おかずを届ける理由
さらにOKANでは、食べきりサイズの総菜を、リモートワーク中の社員に届ける自社サービス「おかん仕送り便」を、オンラインランチで活用しています。
リモートワークで簡単に食事を済ませようとすると、ごはんやパン、インスタント麺などの「主食(糖質)過多」で、「おかず(タンパク質・野菜)不足」の食生活に陥りがちです。
大規模な疫学研究では、タンパク質や野菜、果物の摂取量の少なさや、甘い飲み物やデザート、精製された穀物(米や白いパン)などからの糖質接種の多さが、睡眠の質の低下と関連することが分かっています。
コロンビア大学の研究によると、食物繊維(野菜)の少なさと、飽和脂肪酸の多さ、そして糖質(例えば白パンやベーグル、ペストリー、パスタなど)の多さが、夜中に目が覚める回数と比例することも明らかになっています。
野菜類の摂取の少なさと睡眠の問題の関係はわれわれの調査でも明らかになっており、野菜を毎食食べている人に比べると、毎日食べていない人では睡眠に問題を抱えるリスクが2.3倍になってしまいます。さらに、これらの食生活は、睡眠だけでなくメンタルヘルスにも関わることが示されています。
OKAN・管理栄養士の大浦梢氏は「昔から一汁三菜と言われ、コロンビア大学の研究などでも、食事全体の質に注意したほうがよいとされてきました。一方で、食事全体の質を上げようとしても、一汁三菜を毎回用意するのはなかなか難しい。特に『午後1時の会議』が控えているような日は難しく、どうしてもなおざりになってしまいがちです。従業員が健康に働き続けられる環境を提供する企業の役割として、その部分を、企業側が補う仕組みが求められているのではないでしょうか」とアドバイスしています。
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