なぜスシローやかっぱ寿司で不祥事が? 業界を苦しめる「安かろう、良かろう」戦略と過剰な期待:長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/7 ページ)
大手回転寿司で不祥事が相次いでいる。その背景には、安くて良いものを求める消費者の心理があると筆者を指摘する。各企業が対応するのはもう限界か。
取り残されたかっぱ寿司
かっぱ寿司は、上位3社が15年で急成長したのに対して、一人負けが否めない。コロナ禍の影響も他社に比べて大きく、22年も経常赤字が拡大していた。ただし、最終益は7億円と黒字転換していた。
かっぱ寿司が最も利益を上げていたのは04年で、売り上げが527億円に対して経常利益は84億円もあって、利益率は15%もあったのだ。この頃は席数130席以上の大型店を、業界に先んじて出店し、小型店をスクラップ。05年5月末で100席以上の大型店は全290店の約95%に達していた。今では普通にある、郊外ロードサイドの回転寿司大型店は、かっぱ寿司が普及させたものだ。
05年、タッチパネルと「特急レーン」という高速レーンを、回転寿司に初めて導入したのもかっぱ寿司だ。常に業界の最先端を走っていた。かつては、他社がうらやみ、マネする業態だったのだ。14年には売上高941億円にまで達したが維持できず、当時の7割程度に衰退した感が拭えない。
14年の末にコロワイドがかっぱ寿司を買収し、再建に取り組んでいるが、現在の山角豪氏まで、8年間で6人の社長が交代する異常事態となっている。コロワイドは成果を出す人を抜てきするが、成果が出ない人には厳しい会社だ。
ゼンショーから転職して、21年2月にカッパ・クリエイト社長に就任した田邊容疑者は、短期で目覚ましい成果を上げようと焦った挙句、はま寿司の仕入価格や日次売り上げのデータを盗む“禁じ手”に及んだようだ。一方、田邊体制下においては、シャリに山形県産はえぬきを採用し、酢やしょうゆも改良したという事実もある。
かっぱ寿司はコストカットに熱心なあまり、ネタは薄くなり、シャリも小さいといったイメージが付いてしまっていた。実は既に、原価率はスシローをはじめ他社と同じく、50%近くにまで引き上げていたが、売りは大食いの人向けの食べ放題で、回転寿司のメインターゲットであるファミリーの方を向いていなかった。
コロワイドで再建に取り組んだ歴代社長がネタの改善に注力したのに対して、田邊容疑者はシャリも変えて、「安かろう、まずかろう」のイメージを払拭(ふっしょく)しようとした。しかし、そこに根本的な矛盾がなかったか。
新しい試みとして、店舗で提供するしょうゆに関して、3種類から選べるようになった。一方、はま寿司では、「だし醤油」「昆布醤油」「濃口醤油」「さしみ醤油」「ゆずぽんず」が選べるのを売りにしている。メインはどちらも「だし醤油」だ。はま寿司のノウハウを本格的にかっぱ寿司に移植してきた感は否めなかった。
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