そう来たか! クラウンクロスオーバーRS:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)
16代目新型クラウンの心臓ともいえるシステムはどのように変わったのか。実際にクロスオーバーRSに乗車してみたところ……。
THS2を採用した2.5ハイブリッドシステム
まずはベースグレードとなる従来の2.5ハイブリッドの説明からしなくてはならない。トヨタの主力ユニットである、2.5ハイブリッドシステムは、長い年月を掛けて熟成を進めてきたTHS2を採用している。
THS2は、遊星ギヤを使った、天才的なシステムである。走行時にパワートレインを多様な使い方でコントロールする。そもそも動力源にモーターとエンジンの両方を持つので、モーターを単独で使ったり、エンジンと併用したりする。さらに併用の場合にジェネレーターで発電分を上乗せする場合とバッテリー電力だけで駆動する場合に分かれる。そしてどのケースでも減速時には回生ブレーキを使って、エネルギー回生を行う。
システム設計が天才的なのは、これを遊星ギヤという仕組みだけでシームレスに振り分けてみせることだ。若干乱暴なことを承知で概念を説明すれば、要素は3つ。エンジン、発電機、タイヤだ。
あれ? モーターはどこ? と思われるかもしれないが、実はモーターはタイヤと直結していて(ギヤを挟んでいるだろとかの野暮はなしで)、ここは1つのセットと見なして良い。正確に言えば「タイヤ」は「タイヤ+モーター」となる。このタイヤ+モーターに対してエンジンは遊星ギヤを介してつながるのだが、遊星ギヤは3相だからエンジンはタイヤ+モーターだけでなく、もう1つ発電機ともつながっている。
分かりにくいので、人間が整地用のローラーを引っぱっている絵を想像してほしい。人間がエンジンで、ローラーはタイヤだが、先に述べたようにタイヤにはモーターが組み込まれていて、人力+電気で動かすことができる。これがハイブリッドモードである。当然、人間が休んでモーターだけが働いている場合はEVモードになる。
でだ。ここからが変な例えになるが、この人間の足下の地面がルームランナーのような動くベルトでできているのだ。ベルトを回すと発電する。だから人間の足の力は、直接ローラーを引っぱる力と、ルームランナーを回して発電する力に振り分けられる。
発電機の能力を可変にしてやることで、どのくらい直接引っ張り、どのくらい発電するかを変えることができる。当然その電力はローラーのモーターを駆動することに使われるわけだ。
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