そう来たか! クラウンクロスオーバーRS:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/6 ページ)
16代目新型クラウンの心臓ともいえるシステムはどのように変わったのか。実際にクロスオーバーRSに乗車してみたところ……。
問題点は
ただし、問題がある。人間の筋力がものすごく強いと、発電機の発電能力を超えてしまう。3相の2つ、それはタイヤ+モーターもしくは発電機のどちらか限界の低いほうを超えると、それ以上の力は無駄になってしまうのだ。
言葉を換えると、タイヤ+モーターの反力を受け止めているのは発電機なので、発電機が出せる最大反力を超えたら、それ以上の力はタイヤ+モーターに流すことができずに、流出してしまう。
クルマに詳しい人を前提にさらに追加して説明すれば、遊星ギヤの仕組みはデファレンシャルギヤと一緒なので、片輪が空転したら、それ以上の力は反対側のタイヤに伝わらない。これと同じことになる。
もちろん発電機を大きくして能力を上げれば解決するのだが、どこまでもは大きくできない。そうなると、3.5リッターや4リッタークラスのパワートレイン同等まで出力を上げることは難しい。そこでトヨタはオール電動化時代のハイパワーハイブリッドシステムを新たに開発することにした。こちらの仕組みは簡単で、エンジンとフロントモーターを電制湿式多板のクラッチでつないでやるだけだ。
6段ATとモーターの間に発進用のクラッチと、モーターとエンジンの間にエンジン切り離し用のクラッチの2セットのクラッチを持つ。どちらも電制湿式多板である。ステップATの場合、通常トルクコンバーターを用いることが多いが、トヨタの説明によれば、トルコンのスリップロスに起因するダイレクト感の欠如を嫌って、湿式多板クラッチを使ったと言う。
それもうそではないだろうが、それよりもパワートレインのサイズをコンパクトにするためには、サイズの大きいトルコンを使いたくなかったのだと思う。変速機が6段なのも恐らく同じ理由だが、2.4リッターターボにモーターがサポートし、さらにリヤに大出力のeAxleを備えるこのシステムの総出力は349PS。2つのモーターと過給エンジンという構成からみればトルクも太い。無理やりにも多段化する意味は薄かったと思われる。
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