「からあげクン1個増量中です」の声掛けは効果ある? ローソンがカメラとマイクを設置して分かったこと:実証実験(2/2 ページ)
ローソンは横浜市内の4店舗で実証実験を実施した。防犯カメラとは別に、新たにカメラとマイクを設置してさまざまなことを分析した。どういったことが分かってきたのか。
店員の声掛けは効果があるのか?
店内に設置したマイクを通して、どのような情報を得たのか。
例えば、レジカウンターで販売している「からあげクン」。同商品は普段は5個入りとなっているが、1個増量して6個とするキャンペーンを度々実施している。同社では、キャンペーン期間中、「からあげクン1個増量中です〜」という声掛けを店内で実施することを推奨している。
では、割り引きや増量キャンペーンをしている商品は、声掛けをするタイミングや頻度によって、売り上げに変化はあるのか? 実験結果では、たくさん声掛けしたほうがより多く売れることが分かったという。
また、商品によっては、「夕方や夜間にたくさん購入される」といったように、“売れる波”が存在する。佐久間氏は、声掛けを実施することで「波の形を変える効果はないが、波を高くする効果があることが分かった」と語る。
この実験結果は「声掛けって意味あるのかな?」と考える店舗に対して、説得材料になる可能性がある。
カメラの分析結果は?
カメラによる分析ではどういったことが分かったのか。
アイス売り場でお客が手を伸ばした場所と、商品の売り上げの関係を調べた。映像を解析したところ、最も手をかざしている場所にある商品が必ずしも売れているわけではないことが分かった。顧客がより多く手を伸ばす場所と、そうでない場所がある理由はいくつか考えられる。今後は、顧客が購入するかどうか迷いやすい新商品を、接触頻度の高い場所に置くといった施策が考えられる。
ローソンではこれまで、顧客に店内をぐるっと1周してもらったほうが、客単価が高くなるとされてきた。そのため、1周しやすくなるような店づくりをするオーナーが多いという。
実験してみると、4店舗中3店舗ではそうした傾向が見られた。一方、残りの1店舗では「1周する顧客」「レジ前を通って米飯コーナーだけに行く顧客」「レジ前を通って米飯コーナーと飲み物コーナーに行く顧客」の客単価は変わらなかったという。その後、この店舗では、1周させるのではなく、特定のエリアでついで買いをしてもらいやすいようなレイアウトを試した。
意外な結果が出た店舗と似たような立地・客層の店舗において、同じような顧客分析をするとどうなるか。今後、調査する店舗を拡大していく予定だという。
今回、実証実験でさまざまなことが見えてきたが、今後の方向性についてはどのように考えているのか。佐久間氏は「今回の実験で分かった課題などをしっかりと検証した上で、23年以降の『店舗運営支援AI』導入拡大を目指していく」と説明する。
これまで勘や経験で判断することも多かった部分に、AIがどのような影響を与えていくか。
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