「過去最大の投資」──ABEMA責任者が語るサッカーW杯放映権獲得の舞台裏と狙い:『ウマ娘』マネーが後押し(1/5 ページ)
ABEMA責任者にサッカーW杯放映権獲得の舞台裏と狙いを聞いた。
中東カタールでサッカーワールドカップ(W杯)が11月21日未明(現地時間20日)に開幕する。4年に1度開催され、夏季オリンピック(五輪)と並び、世界最大のスポーツイベントの1つともされるW杯の興奮を日本のユーザーに届けようと、サイバーエージェントが運営する「ABEMA」が、全64試合の放映権を獲得した。全試合無料生中継は日本初の試みだ。ABEMAはなぜ放映権獲得に踏み切ったのか、事業責任者に取材した。
「『新しい未来のテレビ』としてインフラに」
「W杯の試合を提供できる嬉しさと責任感を意識している」。自他共に認めるサッカー好きの記者が放映権獲得を祝福すると、運営元AbemaTVの編成統括本部スポーツエンタメ局の塚本泰隆局長は引き締まった表情を見せ、開口一番こう語った。
そんな塚本局長にズバリ聞いた。「放映権獲得の狙いは何ですか?」。塚本局長は「ABEMAを次のステージに引き上げるためだ」と話した。
次のステージとは何か。続けて聞くと、塚本局長は「われわれは『新しい未来のテレビ』というテーマを掲げ、事業を運営している。言い換えると、時間的な制約にとらわれることなく、視聴デバイスがあればいつでも、どこでも、何度でも視聴可能なテレビというものだ」と自社事業を解説。「目指す方向性として、ユーザーの生活習慣にいかに根ざすかということがある。その中でもスポーツコンテンツは、複合的に見てABEMAと相性がいい。『インターネット配信×スポーツ』というものにチャンスがあると思った」と放映権獲得の狙いを明かした。
賞賛相次いだ全64試合無料生中継 「始めから無料が前提だった」
サッカーの国際大会を巡っては近年、日本代表のカタールW杯最終予選アウェイ戦(DAZN)、欧州最強の代表チーム決定戦「EURO2020」(欧州選手権、WOWOW)などのように特定の事業者が放映権を独占する動きが相次いでいる。放映権料が高騰しており、NHKや民間放送局(民放)各社が獲得できないためだ。
国際大会に限らず、欧州主要リーグ(仏リーグアン・伊セリエA:DAZN、西ラ・リーガ:DAZN・WOWOW、英プレミアリーグ:SPOTV NOW、独ブンデスリーガ:スカパー)や欧州最強のサッカークラブを決める「UEFAチャンピオンズリーグ」(欧州CL、WOWOW)でも有料化が進んでおり、「サッカー=有料」というイメージが定着しつつある。
そうした中で全試合無料生中継と発表したABEMAの対応には、サッカーファンを中心に驚きとともに賞賛の声が相次いだ。塚本局長は無料生中継となった経緯について「新しい未来のテレビを目指す上で、一種のインフラとして、ユーザーが見たいものを無料で提供するというのがわれわれの基本方針。子どもから大人まで多くのファンのいるサッカーというコンテンツを、出来るだけ多くの方が視聴できるよう、W杯も無料で提供すると決断したことは自然な流れだ」と説明する。
同社は総合格闘技や、SPOTV NOWからサブライセンスとして獲得した英プレミアリーグの一部試合を有料課金「PPV」(ペイ・パー・ビュー)で配信しているが「W杯に関しては、始めから無料生中継が前提だった。そこに社内から異論もなかった」と強調した。
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