「過去最大の投資」──ABEMA責任者が語るサッカーW杯放映権獲得の舞台裏と狙い:『ウマ娘』マネーが後押し(3/5 ページ)
ABEMA責任者にサッカーW杯放映権獲得の舞台裏と狙いを聞いた。
放映権料は推計200億円? 「過去最大の投資」
民放とNHKを中心とした放映権交渉が暗礁に乗り上げ、日本での無料放送が一時危機に瀕したものの、ABEMA参入という意外な形で収束した。放映権料の総額などについて聞くと塚本局長は「守秘義務もあり、詳細は答えられない」とした上で「ABEMAとして過去最大の投資であることは間違いない」と述べた。
講談社が発行する週刊誌「フライデー」は5月12日付けの記事で、ABEMAが支払った総額について、複数のテレビ局関係者の証言から200億円と推定している。
『ウマ娘』のヒットで実現した巨額投資
詳細は明らかにならなかったものの、巨額投資であることは認めた塚本局長。その原資として、あのヒットゲームの存在は欠かせないという。それは、グループ会社のCygamesが手掛ける『ウマ娘 プリティーダービー』だ。
実在する競走馬を擬人化したキャラクター「ウマ娘」を育成するという斬新な内容がユーザーの心をつかみ、21年2月のサービス開始から約7カ月で1000万ダウンロードを突破。目の肥えた競馬ファンもハマっているとされている。
最近では文藝春秋社の雑誌「Number」とのコラボ号が、10万部を突破するなど、その勢いはとどまることを知らない。
当然のことながら、事業の稼ぎ頭になっており、リリースした21年通期決算(20年10月〜21年9月)では、ゲーム事業単体の売上高は2627億円(前期比68.6%増)、営業利益は964億円(同217.9%)。ウマ娘のヒットで、同社は1043億円の営業利益を記録した。
22年通期決算(21年10月〜22年9月)はその反動で、ゲーム事業単体の売上高は2283億円(同13.1%減)、605億円(同37.2%減)となったが、高い水準を維持している。
塚本局長は巨額投資実現の背景に「グループとして、広告事業本部、ゲーム事業部、関連会社などの全体の後押しがあったため」とした上で「ウマ娘の影響は確実にある」と、“ウマ娘マネー”が要因の一つになったことを認めた。
ABEMAは開局6年を迎え、さまざまなタイミングが重なった事も大きいという。塚本局長は「18年のロシア大会では放映権獲得の話は社内で出ていなかった」と明かし、その理由を「ユーザーの視聴環境、コンテンツの中継技術の環境、ユーザー適性など、色々な側面の検討タイミングではなかったのではないか」と推察する。
「開局から6年が経過し、コンテンツが充実したことでユーザー数が増え、配信の技術力向上、グループとして金銭的なバックアップがあったため実現した」(塚本局長)
関連記事
- ソニーの「着るエアコン」“バカ売れ” 猛暑追い風に「想定以上で推移」
連日の猛暑が続く中、ソニーグループ(ソニーG)が4月に発売した、充電式の冷温デバイス「REON POCKET 3」(レオンポケット3)の売れ行きが好調だ。同製品は「着るエアコン」とも呼ばれており、ビジネスパーソンを中心に売り上げを伸ばしている。 - “NHK受信料を支払わなくていいテレビ”を製品化 ドンキの狙いは?
「ドン・キホーテ」が発売した、「ネット動画専用スマートTV」がネット上で大きな話題を呼んでいる。テレビと称しながら、テレビチューナーを搭載していないためだ。製品化の狙いと経緯を聞いた。 - ドンキの“NHK受信料を支払わなくていいテレビ”、売り切れ店舗続出 2月中旬から再販へ
「ドン・キホーテ」が2021年12月に発売した「ネット動画専用スマートTV」を2月中旬に再販すると、運営元が明らかにした。初回生産分6000台を各店舗で販売していたが、売り切れになる店舗が続出。6000台の追加生産に踏み切っていた。 - 「ABEMA」がサッカー英プレミアリーグの放映権を獲得できたワケ
サイバーエージェント(CA)が運営する動画配信サービス「ABEMA」(アベマ)で、サッカーのイングリッシュ・プレミアリーグ(EPL)の配信が決定した。同社がEPLの放映権の一部を取得したためだ。ABEMAが放映権をなぜ獲得できたのか。要因を取材した。 - 「生クリーム好き歓喜」──セブンイレブンの“具なし”「ホイップだけサンド」に反響 商品化の狙いは? 広報に聞いた
セブン-イレブン・ジャパンが10月12日から近畿エリアなど地域限定で販売を始めた「ホイップだけサンド」シリーズがTwitterで話題となっている。商品名の通り、ホイップクリームのみを挟んだ“具なしサンドイッチ”となっている。商品化の経緯を聞いた。 - カップヌードルの「溶けたアイスのフタ止めフィギュア」が話題 制作の狙いは? 日清食品の広報に聞く
日清食品ホールディングス(HD)が販売する「カップヌードル」の公式Twitterアカウントが公開した「溶けたアイスのフタ止めフィギュア」が話題となっている。なぜこうしたものを制作したのか。狙いを日清広報に聞いた。 - 「工場の製造が追い付かない」──ファミマの「クリームパン」、4週間で650万個販売 好調の理由を広報に聞いた
ファミリーマートが発売した「ファミマ・ザ・クリームパン」の売れ行きが絶好調だ。販売開始から8日で、クリームパン単体で220万個を売り上げた。1秒に3個売れている計算で、工場の生産が追い付かず、品薄になっているとして、一部の店舗では“お詫び”の掲示物をするほどだ。なぜここまで売れているのか。好調の要因を同社広報に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.