【解説】中国発ファッションEC「SHEIN」は、何がすごいのか:石角友愛とめぐる、米国リテール最前線(1/3 ページ)
中国発ファッションEC「SHEIN」(シーイン)が注目を集めている。推定時価総額は、ZaraとH&Mの合計時価総額を上回るとも報じられている。突如として頭角を現したこの企業は、他のファッションブランドやECと何が違うのか。その強みやテクノロジーの背景に迫る。
今回は、これまでにない低価格でファストファッション業界を席巻する、中国発のファストファッションスタートアップSHEIN(シーイン)の競合優位性と、今後立ちはだかる課題について考察します。
SHEINは11月13日に、東京に初のオフライン店舗をオープンし話題を集めています。同社は日本だけではなく、米国のファストファッション界でも年々存在感を増し、注目されています。
ウォールストリート・ジャーナルによると、同社は今年240億米ドル(約3兆4200億円)の収益を上げる見込みで、ファストファッションの強みを生かして新スタイルを素早く市場に届ける生産体制と、超低価格な価格設定が強みです。
今年初め、ニューヨークのプライベート・エクイティ企業やその他の投資家から10億ドル以上を調達したことで推定時価総額は1000億米ドル(約14兆2400億円)に達し、2大ファッション小売企業であるZaraとH&Mの合計時価総額を上回ったと報じられました。また、同社の商品総額(GMV)は2022年に50%増の300億米ドル(約4兆2700億円)になると予測されています。
インフレが進む米国では、アパレル商品の価格も値上げに転じている現状があります。例えば、これからの季節に欠かせないニットのトップスをH&Mオンラインで検索してみると、24.99ドル(約3500円)ほどであるのに対し、同じような商品がSHEINでは14.16ドル(約2000円)で売られています。
また、SHEINのサイトを検索してみると、トップスの中には(セール品を含め)2ドルや3ドルの価格帯のものも多く見受けられ、その安さとバラエティに富んだ商品のラインアップに驚きます。
特に米国の消費者にとって、2ドルや3ドルほどの価格帯でアパレル商品が購入できることはほぼありえないため、こうしたSHEINの価格設定は非常に魅力的に映るのです。中にはセールで2ドルを切る商品(約280円)もあります。
なぜSHEINはこれほどまでの激安価格で商品が売れるのでしょうか。
関連記事
- アマゾンで増える「送料ぼったくり」被害 “誰だって気づくはず”の手口のウラ側
Amazonで“ぼったくり”な送料を設定する業者から、意図せずに商品を購入してしまう被害が後を絶たない。一見単純なシカケに、引っ掛かってしまう人が少なくないのはなぜなのか? “誰だって気づくはず”の手口のウラ側を探り、問題の本質に迫る。 - “スーツ姿の客”がネットカフェに急増 カギは「PCなし席」と「レシートの工夫」
コロナ禍で夜間の利用者が激減し、インターネットカフェ業界は大きな打撃を受けた。そんな中、トップシェアを誇る「快活CLUB」では、昼にテレワーク利用客を取り込むことに成功、売り上げを復調させた。そのカギは「PCなし席」と「レシートの工夫」にあるという。どういうことかというと……。 - 「課長まで」で終わる人と、出世する人の決定的な差
「『課長まで』で終わる人と、出世する人の決定的な差」とは何か? がむしゃらに働いても、出世できる人とそうでない人がいる。その明暗を分けるたった1つのポイントを、解説する。 - 月給35万円のはずが、17万円に……!? 繰り返される「求人詐欺」の真相
求人票に記された情報と職場実態が大きく異なる、「求人詐欺」が後を絶たない。洋菓子店マダムシンコの運営会社の元従業員は「月給35万円との約束で入社したが、実際は月給17万円だった」として労働審判の申し立てをしている。求職者を守る法律や求人メディアの掲載基準もあるにもかかわらず、なぜ求人詐欺はなくならないのか? ブラック企業アナリストの新田龍氏が実態に迫る。 - アマゾンの新しい返品方法 お金を返し、商品は回収しない──なぜ?
米国は、日本に比べて返品OKの小売店が多い。米アマゾンなどの大手小売りでは、返金するのに商品は回収しない「Keep it」という新しい返品方法が進められている。なぜ、このような手法を取るのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.