沖縄ローカルのハンバーガー店「JEF」がコロナ禍でも強い理由:地域経済の底力(1/4 ページ)
観光業に支えられてきた沖縄の多くの企業がコロナ禍で苦しむ中、沖縄本島南部で店舗展開するハンバーガーショップ「JEF」は、ほとんど売り上げを落とすことはなかった。その要因を喜名史弥社長に聞いた。
ゴーヤーバーガー、ぬーやるバーガー、なんこつソーキサンド……。ユニークな商品メニューが並ぶファストフード店をご存じだろうか。
ここは、沖縄本島南部で3店舗を展開するハンバーガーショップ「JEF」だ。母体会社であるジェフ沖縄は、そのほかにもラーメン店やTSUTAYAのフランチャイズ店を事業運営する。売り上げ全体で4億円ほど。その約8割をJEFが占める。
50年前に創業してから、地域密着を掲げて商いを続けてきた。その愚直な姿勢がコロナ禍で大きな価値をもたらした。
コロナ禍によって沖縄の観光業は壊滅的なダメージを受け、多くの飲食店は風前の灯となった。そんな中でJEFは“無風”だったのである。
「(緊急事態宣言などによって)観光がストップしたときでも、うちは本当に影響が少なかったんですよ」と、同社の喜名史弥社長は振り返る。
理由はシンプルだ。JEFの利用者の9割前後が地元客なのである。
インバウンドをはじめとする近年の沖縄の観光バブルを背景に、JEFは観光業との連携を持ちかけられたことが幾度もあったという。それでも、かたくなに応じなかったのは、地元志向を貫いた結果だった。
沖縄県産の食材にこだわる
JEFの歩みについて少し触れておきたい。JEFは沖縄本土復帰直前の1972年2月、喜名社長の父である喜名民雄氏が創業したエーアンドダブリュ与那原がルーツである。ハンバーガーチェーン「A&W」のフランチャイズ事業からスタートし、86年7月にジェフ沖縄として独立、JEFを開業した。
オープン当初から独自性を重視し、中でも食材の県産品にこだわった。
「独立したとはいえ、店の作りはそのままだし、商品も似ていて、A&Wの殻から抜け出せない部分はありました。特色を出そうとした結果、沖縄の食材に目をつけて、商品開発したという経緯があります」
そうした中で93年5月8日(ゴーヤーの日)に発売したのが「ゴーヤーバーガー」である。商品の開発にあたり、沖縄を代表する野菜のゴーヤーを使うこと自体のアイデアはあったが、どう活用するのかに苦心したそうだ。
「父はゴーヤー嫌いだったのですが、それでも食べられるものを作ろうと。実は沖縄の方でも苦手な方は結構いらっしゃるんですよ。特に子どもが嫌う食材です」
商品化するにあたり、ゴーヤーの苦味を抑えるのが不可欠だった。そこでボイルしたゴーヤーを卵で閉じてオムレツ状態にすることで苦さを和らげる工夫をした。これが功を奏し、人気が出たことで、95年5月にはゴーヤーバーガーにポークランチョンミートを加えた「ぬーやるバーガー」を発売した。なお、この2品が現在もJEFの看板メニューである。
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