沖縄ローカルのハンバーガー店「JEF」がコロナ禍でも強い理由:地域経済の底力(2/4 ページ)
観光業に支えられてきた沖縄の多くの企業がコロナ禍で苦しむ中、沖縄本島南部で店舗展開するハンバーガーショップ「JEF」は、ほとんど売り上げを落とすことはなかった。その要因を喜名史弥社長に聞いた。
ゴーヤーの苦味を消したのに……
消費者に配慮して、ゴーヤーの苦味を消した商品を作り上げたわけだが、その味わいを見直さなくてはならなくなった。引き金となったのは、90年代末から2000年代にかけて起きた「沖縄ブーム」だ。
「私も記憶にあるんですけど、東京の居酒屋に行ったらゴーヤーチャンプルーがあったりして、沖縄が一般的になっているのかなと感じました」
ゴーヤーが全国区になり、多くの人にとってなじみのある食材となった。すると、ゴーヤーバーガーが苦くないという意見が出てきたのである。
「ゴーヤーは苦いからゴーヤーなんだという声が増えてきました。すぐに当時社長だった父の一声でゴーヤーバーガーの調理法を変えました。ボイルではなく生のゴーヤーを炒めたものを使うことで苦味を残しつつ、シャキシャキとした歯応えも得られるように」
それ以来、ゴーヤーバーガーのレシピは変えていないことからも、消費者もこの味を求めているのが分かる。
増え続けるメニュー、ライスやスパゲティも
地元客がおよそ9割という数字が示すように、JEFの最大の強みは、ローカルにしっかりと根付いている点だろう。地元から支持される要因について、「商品力」だと喜名社長は考える。沖縄の人たちが好みそうな商品をラインアップする。それはハンバーガーだけにとどまらない。
「ライスやスパゲティのメニューを出したり。ランチやモーニングはもちろんのこと、コーヒー1杯だけでも歓迎します。お客さまのいろいろなニーズを捉えたい」
客の要望に応えて、メニューはどんどん増えていった。現在は約100種類と、ハンバーガーショップとは思えないほどの数だ。
「通常のお店だと、メニューを新たに追加したら、それに替わってなくなるものもあると思うんです。でも、うちは一人でもお客さんのニーズがある限りは、売れる工夫をしろという方針です」
商品のラインアップを広げている別の理由がある。それは地方の飲食店ならではの悩みでもあるという。
「東京の駅前のような店だったら、専門店で商売が成り立つと思うんですけど、うちみたいな中小企業で、しかも沖縄の郊外に立地する店だと特に難しいと思っています。多様なニーズをくみ取ることが、先代から受け継がれたビジネス戦略なのです」
地元客から支持される理由は商品力だけではない。きめ細やかなサービスも評価されている。例えば、要望があれば商品を食べやすいサイズにカットしてあげるのだ。
「うちのサンドイッチは半分に切って提供しています。そのせいか、他の商品でも『切れますか?』と聞かれます。これって当たり前だと思っていたのですが、他のファストフード店はやっていません。JEFはサンドイッチが切られているのがいいよねという声はよく聞きますね」
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