沖縄ローカルのハンバーガー店「JEF」がコロナ禍でも強い理由:地域経済の底力(3/4 ページ)
観光業に支えられてきた沖縄の多くの企業がコロナ禍で苦しむ中、沖縄本島南部で店舗展開するハンバーガーショップ「JEF」は、ほとんど売り上げを落とすことはなかった。その要因を喜名史弥社長に聞いた。
観光客よりも、まずは地元客
「地域密着」を掲げる店は星の数ほどあるが、JEFが真の意味で地元を最優先に考えていることが分かるのは、観光にシフトしてしない点だ。
コロナ直前まで沖縄の観光業は絶好調だったため、観光スポットへの出店や、ツアー客を乗せた観光バスを店舗に誘致するなど、さまざまな打診があったと喜名社長は明かす。しかし、それらを断った。
「売り上げはすごく伸びるのでしょうけど、例えば、団体客が大挙して店に押し寄せて来たら、今いる地元のお客さまはどう思うかなと考えたんですよ。私が常連だったら、ちょっとなあという気持ちになって」
喜名社長は続ける。
「地元のお客さまのニーズがあって、支持を得られているのであれば、そちらを大事にするのが当然で、もうかるからと観光業に手を出すのは、顧客からの信頼を重視する当社のモットーに反する気がしました」
その信念が、冒頭に述べたようにコロナ禍でJEFの助けとなった。観光客をターゲットにしなければ、確かに爆発的な売り上げを作ることは難しいかもしれない。だが一方で、地元の客はトレンドに流されることなく、安定的に来てくれる。これは店にとって心強い。
JEFは沖縄の人たちに愛されているのだなと、喜名社長が実感する瞬間がある。それは、店内で高齢の女性たちがよく模合(もあい)をしている光景を目にしたときだ。
模合とは、複数人が定期的に集まってお金を出し合い、メンバーの一人が全額を受け取る活動。沖縄ではしばしば夜の居酒屋などで開かれる。
「昼間のお店で、しかも一組ではなく何組もが、3〜4時間も楽しそうにおしゃべりされているのを見ると、JEFが大切なコミュニティーになっていることをありがたく思います。また、地元に密着できていることを実感しますね」
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