クライアントが広告業界の脅威に!? ファミマも参入した「リテールメディア」の破壊力:新たなビジネスモデル(3/4 ページ)
小売業がメディアを生み出し広告収益へとつなげていく動きが強まっている。米国のアマゾンやウォルマートが先行している。日本でもファミマが参入するなど、勢いが強まっている。
b8taの衝撃
小売業にサービスを付加するRaaS(Retail as a Service)モデルの世界的代表企業である米国発のb8ta(ベータ)は、20年に日本に初出店しました。それ以降、東京の有楽町、新宿、渋谷、そして埼玉県の越谷レイクタウンの4店舗を展開。体験を提供する店舗として拡大を続けています。
60センチ×40センチを1区画として1カ月30万円でメーカー・ブランドへスペースを提供。1商品ごとに設置されたタブレットにブランドの訴求動画やECへの動線を強化しています。店頭に設置されたAIカメラから取得したデータ分析結果を共有することで、ブランド側は商品に接触した人数や動画視聴数、ECへの流入などを検証し、マーケティングへと活用していきます。
b8ta有楽町店の256平米のスペースに仮に100のブランドが展開した場合、1区画30万円×100ブランド=月間3000万円の売り上げを得ることになります。これを1日当たりに換算すると100万円であり、200平米ほどの面積の平均日販が約50万円であるコンビニエンスストアと比較しても、大変良好な数値であることがうかがえます。
このスペースがどれほどの広告価値があるかを定量的に検証し、メーカーのマーケティングを支援するモデルが実現されている良例です。売り場は売るためだけの場所にあらず、体験やデータ取得という役割が付加されているのが今のリテールビジネスの潮流です。
広告枠だけを用意して参入すると痛い目に
しかし、リテールメディアを立ち上げれば成功するかというとそんなに簡単な話ではありません。実は店舗をメディア化するという動きはもう10年以上前からあったことです。店舗のショーウィンドウや柱スペース、チラシスペースなどを他社に販売しようというアプローチは失敗の歴史といっても過言ではありません。
その最大の失敗要因は「広告の枠売り」をしたことです。
小売業が広告で収益を得るということは、広告市場で戦うことを意味します。そうなると着目すべきは広告業界の勝ちパターンであり、この勝ち筋を知らずして広告枠だけを用意して参入すると痛い目に会います。
次の図に、広告業界の潮流を整理しました。広告会社はこのような潮流の中、クライアントから依頼を得るべくせめぎ合っています。その中でもクライアントが求める要望が高度化しているのが顕著です。昔は広告といえば、メディアに出す、広告物を制作し納期通りに納品できることで価値がありました。
しかし、その価値基準が広告がどれくらい見られているのか、心理にどう好影響があるかという広告効果を求める時代に入りました。その後、今では広告が見られているかだけではなく、お店にどれだけ来店したのか、そして最終的に購買したのかという売り上げ効果までを広告に求めるようになりました。これはクライアントであった小売企業であれば、今まで広告会社に要望をしてきたことを思い返せば容易に理解できるはずです。
それが今、自社が広告メディアを立ち上げるということは、広告主から自社が売り上げ成果を求められる立場になるということになるのです。
だから、「この広告スペースが月いくらです」という家賃を支払ってもらうだけで、数値検証はブラックボックスという古き広告モデルを展開しているようではうまくいかないのです。広告業界ではスペースブローカーの時代はとうに終焉を迎えており、ビジネス変革を支援するという高いレベルへチャレンジしています。そのためにデータを収集分析し、根拠の明確な提案を実行した上で検証していくというサイクルを基本としています。
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