その謝罪、逆効果かも……炎上発生時における「3つの心得」:「炎上」の正しい回避法(1)(3/3 ページ)
ネットが普及し、いとも簡単に「炎上」が起きる世の中になった。炎上の火種を見つけたとき、初動の対応がずさんであるほど、不手際がさらに広く拡散されて悪い評判が広まってしまう。そうならないために、どのように対応すべきなのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏が解説する。
謝罪や対応が逆効果に? 気を付けるべき「迅速」と「拙速」の違い
炎上は当事者のあずかり知らないところで進行するものであるため、「発覚時には既にネガティブな情報が回収不可能な状況まで拡散している」という前提を認識しておく必要がある。従って、「一刻も早く対応しないと、企業の存続危機にもなり得る非常事態である」との覚悟で迅速に事態収拾にあたることが求められる。
ただし、迅速な対応が必須である一方、「拙速」は避けなければならない。これまでも、状況把握が不十分で、慌てておこなった対応が「その場しのぎ」「取り繕い」などと、かえって批判を呼ぶ結果に至ったことは多々ある。
具体的にはこのようなものだ。
- 組織として公式に対応する前に、炎上原因となった投稿を、何の説明もなく削除してしまった。
- 原因究明を実施する前に、『自社には責任はない。われわれはむしろ被害者である』といった趣旨の発表をしてしまった。
- 疑義や批判を受けて謝罪表明を公開する際、自社Webサイト上ではなく、外部のテキスト作成ツールやPDF資料によって行った(それによって炎上事案にまつわるキーワードで検索しても発見されづらくなるため、隠蔽の意図が疑われた)。
- 謝罪文においても、自社の違法性が疑われる行為について明確に言及せず、「不適切な表現」といった記述にとどまっていた。
- 組織の正式な広報窓口からの公式発表がなされる前に、経営者や関係者、従業員などがそれぞれ勝手に私見をコメントとして公開した。
実際に過去、炎上時に発生したこれらの対応は、混乱の渦中では致し方なかったのかもしれないが、結果として「ネガティブな情報をあえて見つけにくくして、隠蔽工作しようとしているのでは?」「批判が自然に収まるのを待って、フェイドアウトを狙っているのでは?」「社内が混乱していて統制がとれていない。実は未熟な組織なのでは?」といった形で、むしろ疑念が拡大してしまった。
それゆえ、本来なら「局所的な騒ぎ」で済んでいたものが、「全国規模の炎上」へと発展し、結果的に深手を負ってしまうことになったのだ。
では、具体的にはどのように対処するべきなのか。次回の記事で、詳細を解説する。
著者プロフィール・新田龍(にったりょう)
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役/ブラック企業アナリスト
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。労働環境改善による企業価値向上のコンサルティングと、ブラック企業/ブラック社員にまつわるトラブル解決サポート、レピュテーション改善支援を手掛ける。またTV、新聞など各種メディアでもコメント。
著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『クラウゼヴィッツの「戦争論」に学ぶビジネスの戦略』(青春出版社)
12月1日に新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)を発売。
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