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「不快な気持ちを抱かせた」「誤解を招いた」はなぜNG? 炎上から企業を守る、正しい対応とは「炎上」の正しい回避法(2)(3/5 ページ)

ネット上でネガティブな意見が爆発的に広がってしまう「炎上」。本来なら「局所的な騒ぎ」で済むような内容でも、一つ対応を間違えると全国規模の炎上へと発展し、深手を負ってしまうことがある。では、具体的にはどのように対応したらいいのか?

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(2)対応方針の確定

 炎上時における対応は、いわば「危機管理広報」である。

 普段の前向きな広報とは異なる面が多々あるうえ、人は短期的にメリットのありそうな選択をついしてしまうものだ。しかし、不用意な対応によってかえって批判が高まり、そちらに対応のリソースを割かれてしまい、本来の問題解決に悪影響を及ぼしてしまってはどうしようもない。

 広報担当者が冷静に判断して経営者に具申できればよいのだが、なかなか難しいこともあろう。そんなときに立ち返って確認しておきたい、危機管理広報の対応指針を4つ挙げておこう。


画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ

1.「謝罪」から入る

 きっかけや内容がいかに自社にとって不本意なものであっても、炎上状態にあるということは、「不快に感じた人が一定割合存在する」ことに他ならない。一刻も早く釈明や反論をしたいところであろうが、その前にまずは「世の中をお騒がせしたことについての謝罪」をすることが基本となる。

 「謝罪だなんて! 自分たちは炎上による罵詈雑言の被害者なのに!」と思われるお気持ちは重々分かるのだが、「謝罪すること」は「法的な責任を認めること」とイコールではないので、身構える必要はない。まずは炎上という事態に至ってしまったことについて、「不適切な点があったと重く捉えており、真摯に対応していく」との姿勢を示すことが重要である。そうすれば批判者側でも、「その後の釈明を聞こう」といったスタンスにもなるはずだ。

2.全ての判断基準は「組織外」に置く

 危機管理広報の落とし穴となるキーワードがある。それは「この業界では当たり前」だ。

 組織内の不祥事やトラブル、失言が公になった際などに、トップや担当者が「業界の常識」を持ち込んで判断してしまったことで、対応に妥協や詰めの甘さが生じることはよくある。また関係者の「今まで誰も何も言わなかったのに、何を今さら文句を言われないといけないのだ」といった本音は、決して口をついて出ることはないだろうが、雰囲気はそれとなく感じとれてしまうものだ。それでは事態が収束するどころか、炎上がさらに拡大してしまうことにもなりかねない。

 「社内的には問題ない」「この業界ならどこでもやっている」「今までずっとこのやり方でやってきた」といった言い訳は通用しない。「業界の常識」とか「暗黙の了解」といったものから極力距離を置き、これまでの経緯などを全く知らない一般の人がネガティブな情報を目にしたらどういった印象を持つか、イメージすることが重要だ。

 炎上が進展してからでも、都度ネットを検索すれば「世間の声」はいくらでも拾うことができる。そこから、「世間はどんな点に注目しているのか」「何が問題視されているのか」といったポイントが分かるはずだ。その論点と向き合って対応していく必要がある。危機管理広報の判断基準を、社内や業界内に置いてはいけない。

3.事実をフルオープンにする

 自分たちに都合が良かろうが悪かろうが、把握できている情報は全て、主観的判断は差し挟まずフルオープンにすることが基本だ。情報の出し惜しみは新たな疑惑を生み、後で発覚したときに「隠蔽していたのでは?」などと余計な勘繰りにつながり、騒ぎも大きくなってしまう。必要な情報か否か、判断するのはこの場合あくまで受け手側なのだ。具体的な開示情報とスタンスについては、次項にて詳説する。

4.「組織の問題」として責任を負う姿勢を示す

 発端が自組織の不祥事や失言にあるとしても、暴言レベルの批判を浴び続ければ、感情的な反発もしてしまいたくなるものだろう。ましてや、その原因が自組織の従業員による不手際であれば、「従業員が軽率だった」などといった釈明で済ませてしまいたくなるかもしれない。しかし、それでは「他人事」「責任逃れ」と捉えられ、炎上が加速するリスクがある。あくまで、騒動を引き起こし、世の中を騒がせてしまった自組織の問題として、組織ぐるみで対応する姿勢を示すべきなのだ。

 その他にも、責任逃れだと捉えられるリスクのある表現として次のようなものが存在する。いずれもつい使ってしまいがちだが、炎上に油を注ぐ結果になりかねず、くれぐれもご法度として認識しておきたい。

・不快な気持ちを抱かせたなら

 既に炎上している時点で、不快な思いを抱いている人は一定割合存在しているため、他人事のように聞こえてしまう。逆効果である。

・遺憾である

 誤用しているケースを見ることが多いが、「遺憾」とは「期待通りにならず不満だ」という意味であり、謝罪の場面で用いる言葉ではない。こちらも、用語のチョイスで更に批判が強まる展開になりかねない。

・誤解を招いてしまった

 「誤解されている」と感じているのはあくまで自分たち側であり、あまりに主観的な言葉である。批判している側は当然ながら「自分たちが誤解している」とは思っていない。すなわち、相手に対して「それは誤解です」と述べるのは、「あなたは間違っている」と言っているのと同じだ。

 誰しも、間違っていると言われれば気分は良くないし、とくに炎上時点であなたの組織への信頼度が高い人であればあるほど、「信用していたのに、誤解と言われた……」と反発が大きくなる可能性が高い。

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