もはや高級品? 「1杯1000円」のラーメンインフレが業界に迫る、2つの道:もはや「庶民の食べ物」ではない?(2/3 ページ)
値上げラッシュやラーメンブームとともに、1杯1000円のラーメンが増えてきた。それでもまだ、ラーメンは「庶民の食べ物」といえるのか? 専門家は、ラーメンにはこれから進むべき「2つの道」があると指摘する。
そもそもの問題は、ラーメンの品質の向上幅と価格や価値観の上昇幅が比例していない点にある。これを解消するには、ラーメンにさらなる付加価値をつけて1000円以上でも満足できるものにするか、あるいはラーメンを再設計して再び「庶民の食べ物」として提供するか、である。本記事では、「庶民の食べ物」としての挑戦を続ける2人にフォーカスしていく。
低価格なラーメンを出せれば、逆に「チャンス」
人気チェーン店「つけめんTETSU」を創業後、数々の人気ラーメンブランドを手掛けている小宮一哲氏は、「ラーメンは手軽に食べられるものであるべき」という考えを持っている。しかしながら、既存のラーメンの品質を守るためには、安価で提供し続けることは難しい。そこで小宮氏は、リーズナブルな価格で提供できるように新たな設計でラーメンを作り直して、新しいラーメン店を立ち上げる試みにチャレンジしている。
「まず第一に、手軽に食べられるラーメンを作りたいと思ったこと。そして他のラーメン店が値上げにシフトしているときに、高品質で低価格なラーメンを提供できれば、チャンスだとも思いました」(小宮氏)
小宮氏が立ち上げた2つの新ブランド「釜玉中華そば ナポレオン軒」と「駅ラーメン 深だし中華そば」は、いずれもリーズナブルな価格帯で高品質なラーメンを提供するというコンセプトで生まれたもの。ナポレオン軒の「釜玉中華そば(並)」も、深だし中華そばの「かけ深だし中華そば」も、ともに1杯590円と、昨今のトレンドに反した安さといえるだろう。
「どちらも具がほとんど乗らないシンプルなものですが、これが一番おいしい食べ方になるように作っています。ただ、チャーシューやメンマなどが欲しいというお客さまがいるのも分かっているので、そうしたメニューも用意しています」(小宮氏)
原価以外の工夫で安さを実現
チャーシューやメンマが入ったメニューに関しても、ナポレオン軒の「リッチ釜玉中華そば(小)」は690円、深だし中華そばの「深だし中華そば」は660円と、リーズナブルな価格になっている。なぜ、“ラーメンインフレ”の時代の中で、こうした価格帯のラーメンを提供できるのか。背景には小宮氏のラーメン職人としての技術のみならず、経営者としての俯瞰的な目線も隠れている。
「単純に原価を抑えるだけではなく、それ以外のコストを抑えることも意識しています。例えば、券売機や厨房設備の大半は中古のものを使って初期投資を抑えています。チャーシューは低温調理で作っているのですが、ロスを極力排して肉の“歩留まり”をよくし、コストをカットすることが一因です。スープの抽出には圧力鍋を使って、抽出時間を短縮することでスタッフの労働時間を削減する狙いもあります」(小宮氏)
安く提供しようとすると、どうしても原価にばかり意識がいきがちだが、小宮氏は店全体を運営していく上でのコストも考えて、ラーメンと店を再構築している。その結果、高品質で低価格のラーメンを出すことを可能にしているのだ。
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