もはや高級品? 「1杯1000円」のラーメンインフレが業界に迫る、2つの道:もはや「庶民の食べ物」ではない?(3/3 ページ)
値上げラッシュやラーメンブームとともに、1杯1000円のラーメンが増えてきた。それでもまだ、ラーメンは「庶民の食べ物」といえるのか? 専門家は、ラーメンにはこれから進むべき「2つの道」があると指摘する。
「原点回帰」のラーメン作り
千葉で「らーめん福たけ」をはじめ、人気店を数多く展開する福田竹明氏も、安くておいしいラーメン作りに挑み始めている。2022年8月にオープンした「ラーメンショップ◯化(まるか)」は、ラーメン1杯650円という価格で勝負している。福田氏は、店名の由来について次のように話す。
「ラーメンにとって1000円という価格は中途半端で、今後は高いラーメンか安いラーメンの二極化が進むだろうと考えたときに、僕は安くておいしいラーメンを作りたいと思ったんですね。安くておいしいラーメンといえば、ロードサイドにある『ラーメンショップ』というイメージが僕にはあるし、お客さまにもあると思うので、あえてこの名前をつけました」(福田氏)
“本家”ラーメンショップさながら、安くておいしいというイメージを喚起するため、赤を基調にした看板に大きくラーメンの文字を掲げ、誰でも入りやすい雰囲気にした。家族連れでも入りやすいように清潔感のある広い店内は、老若男女幅広い客層でいつも満席の賑わいを見せている。
「らーめん福たけはメニューも多くて仕込みも大変で、労働時間はもちろんラーメン作りを教えることもなかなか難しいのが課題でした。メニューが絞られている『まるか』だと、仕込みやオペレーションの効率もよくて楽なので、その分いろいろな技術などを教えることができるのも利点ですね」(福田氏)
これまで20年以上ものあいだ、多くのラーメンを作り続けてきた福田氏。ラーメンの“原点”とも呼べるラーメンショップをモデルにした、シンプルなラーメンを作ることで、いろいろな発見があったという。
「いずれはフランチャイズでの展開も考えているので、誰でもおいしく作れるラーメンにしなければと思っています。今までさまざまな食材を使ったラーメン作りをしてきたので、シンプルな作り方だと不安になったりもするんです。『もっと骨を足した方がいいのでは』とか、『違う材料を入れた方がいいのでは』――と。限られた原価や環境の中で、できるだけ手間をかけずにおいしいものを作ることは、職人としてもやりがいがあると感じています」(福田氏)
多くが値上げするラーメンインフレの時代だからこそ、「庶民の食べ物」としてのラーメンを守り続ける店があってもいい。もちろん、ラーメンの価値をさらに高めて、より高価格なラーメンを作ることで、「グルメ」の道を開拓する店もあっていい。ラーメンという料理が長い時を経て、真の意味での多様性を持つ時代がようやくやってきたのではないか。
筆者プロフィール:山路力也
フードジャーナリスト・ラーメン評論家・かき氷評論家。『Yahoo!ニュース個人』オーサー/『Voicy』パーソナリティ/著書『トーキョーノスタルジックラーメン』他/YouTube『YAMAJI CHANNEL』『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信チャンネル』/飲食店向けオンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』運営/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら、テレビ・雑誌・ウェブなど様々な媒体で活動中。飲食店のプロデュースやコンサルティングも数多く手掛けている。【オフィシャルサイト】
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