なぜ、「AOKI」がひとり勝ち? 会社を救った大ヒット商品と、紳士服以外の事業:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)
紳士服4大チェーンで、「AOKI」を展開するAOKIホールディングスが復活を果たしつつある。競合他社は苦戦しているのになぜなのか? 背景を探っていくと……。
パジャマスーツがヒット
AOKIが復調した要因を、もう少し詳しく見ていこう。
19年3月末の総店舗数は1209店。そのうちAOKI中心のファッションは697店、快活CLUB中心のエンターテインメントが499店となっていた。
22年9月末には、総店舗数は1457店。そのうちファッションは597店と100店の大幅減、エンターテインメントが850店と351店増の大幅増で、コロナ禍のうちにエンターテインメントの店舗数が、ファッションを上回った。これは、22年6月に、ネットカフェ「自遊空間」を運営するランシステムを子会社化した増加分も含まれている。ランシステムの店舗数は132店(うちFC63店)。
ただし売り上げの比率は、23年3月期中間決算の時点では、ファッションの362億円が、エンターテインメントの346億円を、まだわずかに上回っている。しかし、快活クラブがAOKIに代わって、会社のメイン事業に昇格するのは時間の問題と思われる。
とはいえ、ファッションのほうも、今年4〜9月では前年比18.9%増と順調に推移。2億円の営業利益も出ている。行動制限の緩和により、既存店客数が2桁増の15.5%増となったのが、好調の要因。冠婚葬祭が再開されたために、フォーマルの需要が増大。また、夏場はクールビス関連のアイテムが売れた。
20年11月の発売以来、累計販売着数が18万枚を突破したパジャマスーツは、コロナ禍での数少ないアパレルのヒット商品となった。これは、ニューノーマル時代のリモートワークに対応。パジャマの快適さと、スーツのフォーマルさを兼ね備えたセットアップアイテムとして、開発された。1日中着ていられる部屋着のリラックス感があり、オンライン会議や通勤にも耐えられる新感覚のビジネス服だ。
ノーカラーの上着も多いが、今秋冬は出社の機会増大のため、襟付きを前年の約5倍に増やして展開している。
他の今秋冬の商品では、毛織物世界三大産地の1つとされる「尾州」(愛知県、岐阜県)で編まれた上質な「尾州ウールブレンドニットジャケット」が、全国旅行支援開始に伴う旅行ニーズの拡大を受けて前年比で2.5倍の売り上げとなっている。18年の発売以来、累計4万着を突破する人気商品だが、今年は色柄を4色から6色に強化している。価格は2万6290円。
また、6月に発売して1週間で完売した、疲労回復ウェア「リカバリーケアプラス」を11月からAOKI全店で本格展開。これは、着るだけで血行が促進されて疲労回復効果が見込めるという、一般医療機器へ届け出をした機能商品。
さらに、太陽光に含まれる近赤外線を吸収して、外に出るとすぐに暖かくなるという新素材「CWO」を用いた、高機能コート「ソーラーヒートコート」を、11月に発売した。
このようにAOKIならでは特長を備えた意欲的な商品を続々と投入している。
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