鉄道各社は苦況なのに、なぜJR東海は「大幅な業績回復」を成し遂げたのか?:妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(3/6 ページ)
JR東日本に限らず、鉄道各社の多くは厳しい状況にあります。しかし、そんな中で業績回復が一際早いのがJR東海として知られる東海旅客鉄道です。同じ鉄道事業者なのになぜ、違いが現れたのか? そのギモンを決算書から読み解き、JR東日本と比較しながら解説します。
違いは、収益性が高い新幹線への依存度
直近の業績についても見ていきます。今回見ていくのは23年3月期の第2四半期までの業績です。
売上高は前年同期比63.9%増の6341億円、営業利益は前年同期に341億円の赤字でしたが1719億円の黒字に転じ、純利益は444億円の赤字から969億円の黒字へと大幅な業績回復となっています。
JR東日本は23年3月期の第2四半期時点の売上高は前年同期比27%増、営業利益は667億円の黒字、純利益は271億円の黒字という状況です。比べると、JR東海の業績回復の速さが分かります。
これには、JR東海は「新幹線への依存度が高い」ことが大きく関係しています。鉄道事業の運輸収益のうち、新幹線が占める割合をJR東日本と比べてみます。(23年3月期第2四半期時点)
- JR東日本:26.3%
- JR東海:91.6%
見ての通り、新幹線への依存度は極めて高いと言えます。在来線ではなく東海道新幹線によって大きな収益を上げている状態です。
東海道新幹線は、収益性が非常に高い事業です。コロナ以前の19年3月期、両社の営業利益率は
- JR東日本:16.1%
- JR東海:35.5%
となっており、倍以上の差がついていました。鉄道事業の収益性は乗車率が高い便をどれだけ数多く走らせられるかにかかっています。
路線の維持、電車の運行コストは大きな変動がない一方で、売り上げは乗客数で変動するため、乗車率が高い便を数多く運行できればできるほど収益性は高くなるわけです。
JR東海の主力である東京-大阪をつなぐ東海道新幹線は、数分おきに、乗車率の高い便が出ています。安定して乗車率が高い便を、数多く走らせるため収益性が非常に高いのです。
一方でJR東日本などは在来線の規模が大きく、その中には不採算の路線も多数抱えています。路線を維持するコストはかかるものの、走らせられる便が少なく、さらにその数少ない便でも乗車率が低いわけなので、収益性に大きな差がつくのです。
このため平均的な乗車率や走らせられる便の数には大きな差が出ており、結果として利益率に大きな差が生まれています。
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