西武池袋駅上が「ヨドバシカメラ」に? 西武HDの苦悩とは:街づくりも鉄道の仕事(4/4 ページ)
セブン&アイ・ホールディングス(HD)によるそごう・西武の売却によって、西武池袋本店にヨドバシカメラが入店する計画が浮上している。その狙いは……。
西武HDの苦悩
しかし西武HDの難点として、すでに旧西武鉄道グループと旧セゾングループは別々の道を歩み、セゾングループもバラバラになってしまった。西武鉄道はホールディングス体制に変化し、同じグループ内に商業施設や不動産事業会社もあるものの、他の鉄道グループにはある百貨店やスーパーがない状態が続いている。
ただ、遠い親戚のような状況にあるためか、池袋や所沢に西武百貨店があり、西武鉄道沿線には西友がある。西武鉄道やプリンスホテルのカードは、セゾンカードである。
西武HDの後藤社長は、百貨店の文化的意義を強調し、不動産を持っている立場として文化的施設であり続けることを願い、それが西武HDにとっても最善のことであると考えている。
池袋駅の上に西武池袋本店があるのは、西武HDが大事にする街づくりの上でも、企業戦略の上でも、重要なこととなっている。
では西武HDは、どうすべきなのか?
現状では、グループ内のプリンスホテルの不動産を売却し、運営に特化する形で担っている。西武HDが得意だったレジャー産業も、コロナ禍で大きな打撃を受けている。不動産を積極的に購入するわけにもいかない。
西武グループの創業者・堤康次郎は不動産ビジネスを、旧西武鉄道グループから離れていった堤清二は文化事業を、それぞれ得意としていた。後藤社長の提唱する西武HDの百貨店と文化、街づくりの考え方は、堤清二の考え方と似たようなものを感じさせられる。
出資をするのは現在の西武HDの状況からは難しいものの、連絡組織としての旧西武・セゾン懇話会のようなものをつくり、不動産などに関してはゆるやかな協力関係を築いていく戦略を立て、もともと同じ企業グループだったところがシナジー効果を発揮して繁栄するようにしていく。その中で西武池袋本店の文化的側面を維持していくのが妥当なのではないだろうか。そこにヨドバシカメラをどう位置付けるかを考えることが必要だ。
堤家はすでに西武HDへの影響力はなく、セゾングループ創業者の堤清二も亡くなった。その状況だからこそ、もともとの関係をゆるやかに作り直していくことが、西武HDの不動産戦略に有用であり、西武沿線地域の人たちにとってもありがたいことではないだろうか。
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