「受験生しか見えない」広告なぜ出した? 担当者が伝えたかったメッセージとは:体験型の広告(2/2 ページ)
12月、東京の渋谷・池袋駅に掲示された、ある飲料商品の広告が話題を呼んだ。複数のカラーを重ね合わせたモザイク状のデザインで、一見したところ、メッセージらしきものは読み取れない。実は、あるものを広告にかざすことでメッセージが浮かび上がる、ユニークな仕掛けが施されていた。
メッセージは何度も議論し、推敲を重ねた。強すぎたり、受験生を傷つけたりしないよう、「言葉を何度も入念に書き直した」(企画担当者)という。
赤シートをかざすという体験型の手法が話題を呼んだ一方で、「赤シートをかざさなければメッセージが見られない」という点には、メッセージが広く伝わらないリスクも考えられる。こうした懸念はどう考えたのだろうか。
「あえて隠す」リスクはなかった?
「電車内で見かけた赤シートを持つ受験生その1人に届けたいと考えたのが発端だったため、リスクはあまり気にしませんでした」
「『努力しているからこそ見えるものがあるんだよ』ということを体験できる仕掛けでもあるので、その意味でも、あえて隠しているということが強いメッセージになっていくのかなと思いました」
別の企画担当者も次のように振り返る。
「ターゲットを絞るのは、リスクとまでは言いませんが、怖いなという気持ちは多少ありました。しかし、広告が見られなくなったと言われる時代、ターゲットを受験生に絞り、赤シートを用いるといった工夫は必要だと感じました」
今回、SNSで話題になることも強く意識したという。体験できるのは赤シートを持った人に限られる。実際に体験できない人にも間接的にメッセージが伝わるように「あえて隠す」という、関心を引く工夫を凝らした。
あえてメッセージを隠すことで、ユーザーの関心を引く。ターゲットをピンポイントに絞ることで、より強いメッセージ性を帯びる――。広告の可能性と価値を物語る、特徴的な事例になったと言えそうだ。
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