人口1075人の村でも黒字を実現 セコマ会長が「過疎地への出店は福祉ではない」と語る理由:後編(3/4 ページ)
「奇跡のコンビニ」として知られる「セイコーマート初山別店」。人口1200人でまさかの黒字経営を実現した要因は──。セコマの過疎地への出店に対する姿勢を取材した。
住民が力を合わせて「600万円寄付」
買い物できる店がないということは、住民にとって死活問題だ。農林水産省の「食料品アクセス問題」に関する全国市町村アンケート調査では、86.4%の市町村が「買い物が不便・困難な住民への対策が必要」と回答。その割合は2015年以降増加を続けている。
「お店がない地域の住民は本当に大変だと思います。例えば、ネットでガリガリ君を1個を頼むわけにはいかないでしょ? 70円のガリガリ君が、送料などを考るといくらになってしまうことか……。何でも通販で宅配できるから大丈夫というのは、都会の発想です。肉を200グラムだけ、通販で注文しますか? 調味料や夕飯の材料を1つ切らしちゃったというときは、コンビニに走っていくでしょう。もしお店がなかったら、生鮮品が不足してしまいます。やはり、リアル店舗は地域にとって必要不可欠なのです」(丸谷会長)
セコマは初山別村以外でも多くの過疎地域に出店をしている。初山別村の事例は成功しているとはいえ、やはり過疎地域での出店はビジネスとして成り立たせることがかなり大変だろう。セコマには多くの地域から出店の依頼が来るというが、出店の可否はどのように選定しているのだろうか。
「基本的に『何でもYES』の姿勢です。話をくれるだけでもありがたいと思っているので『何とか要望に応えられるように頑張ります』という考えで動いています。もちろんお断りするケースもありますよ。自治体が無関心で何も協力がない場合や、地元に根付いた商店があって競合してしまうケースなどです。買い物できる場所が1カ所もない、もうどうしようもないというときに初めて話が進んでいきます」(丸谷会長)
過疎地への出店では、「自治体の協力」が不可欠だ。実際に「セイコーマート上渚滑店」(北海道紋別市)の開業にあたっては、町の住民が600万円を寄付し、土地を提供したことで出店が実現した。
「上渚滑町の出店では、国道沿いにあった古いドライブインを修繕してお店を建てようと考えていました。しかし、調べてみると物件が違法建築で、諦めなければいけなくなり……。それならばと住民の皆さんがお金を集めて、物件を解体して更地にし、買い取ってくれたのです。人口900人の町で、600万円ほどを土地の回収に使用していただきました。土地は住民が紋別市に寄付し、紋別市からセコマに無償で提供されています。
このように、市区町村と何度も話し合いを重ね、協力し合うことができなければ、各地域での出店は実現できません。こんなの、経営戦略でなんて出せませんよ。各店舗で戦略を考えているというより、なんとか出店できるスキームを作り出している感じです。何とかしてあげたい、しかし私たちだけでは難しい。だから、自治体や住民の協力を仰ぎ、何とか実現できているんです」(丸谷会長)
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