コラム
「クビを社内で公表された」 会社を名誉棄損で訴えられるのか、判決は?:懲戒処分のあれこれ(3/3 ページ)
最近、SNSで「やる気のない社員をクビにした」と投稿し、それが炎上した出来事がありました。SNSへの投稿はあまり例を見ないことですが、解雇を含む懲戒処分の内容を会社内で公表しているケースは多くあります。これは問題ないでしょうか? 社会保険労務士が解説します。
「懲戒処分」の有効性をどう示すべき?
前述の通り、懲戒処分の公表について名誉毀損が争われるときは、根本の「懲戒処分の有効性」が問われます。懲戒処分の有効性を確認するうえで欠かせないポイントは次の4つです。
- 就業規則に懲戒事由が明記され周知されていること
- 懲戒事由に該当する事実があること
- 懲戒処分の内容が社会通念上相当であること
- 適正な手続きを経ていること
従業員側から懲戒処分についての物言いがあれば、これら4つについての説明が求められます。初めて懲戒処分を行う場合や懲戒解雇などの重い処分を科す場合は、専門家のアドバイスを受けながら進めるのが望ましいです。
また、4つのポイントから分かるように就業規則がなければ懲戒処分は行えません。そのため、10人未満の会社であっても就業規則の整備は必須です。さらに会社として懲戒処分の公表を前提とするのであれば、その旨もあらかじめ就業規則に規定しておきましょう。その上でルールに則り粛々と行うことで不要な争いを回避することができます。
いずれにしても会社が適正な組織運営をするためには、懲戒処分に該当するような問題行動の発生を予防することが大切です。問題行動が突発的に発生するのはまれで、ちょっとしたルール違反を上司や同僚が見過ごし、次第にエスカレートした結果として出現します。
よって、懲戒事案が発生したときは個人の問題として捉えるだけではなく、組織の問題として予防策を講じることが強い組織を作るうえで重要です。懲戒処分の公表もその一環として実施するようにしましょう。
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