日銀が今さらサプライズをしても、まだまだ「値上げ地獄」が続きそうな理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(1/3 ページ)
日銀が続けていた“異次元”の金融緩和を見直すようだ。これにより、長期金利が上がるとともに、ドル円もやや円高に傾き「何かが変わるぞ」と感じた人も多いのでは。果たして本当に変わるのか?
日本銀行(日銀)の“異次元”緩和政策はついに大きな転換点を迎えたといって良いだろう。報道によると、日銀が19〜20日に開催した政策決定会合にて、これまで上下±0.25%程度の変動にコントロールされていた長期金利(日本国債10年物)を上下±0.50%まで許容するという方針を決めたという。
公表直後から長期金利の金利は0.4%台後半まで急騰し、その他期間の国債における利回りも同様に上昇へと転じた。このような国債の金利変動が私たちのビジネス環境にもたらす大きな影響といえば「円高」だろう。
世界各国の中央銀行が金利を上昇させる中、かたくなにマイナス金利政策を継続させている日銀は、「マイナス金利で円を借り、それを売って金利の高い米ドルを買うことで金利差益を得る」という類の取引を続けてきたといえる。これを「円のキャリートレード」といい、過去にも流行したことがある取引形態である。
同様のケースは過去にも
スイスが一足先に利上げしたことにより、先進国で唯一マイナス金利政策が敷かれていた日本円は、全世界に対して通貨安による金利差のレバレッジを供給する存在となっていた。今回、日銀の実質的な利上げによって利ザヤが縮小すれば、金利差縮小を織り込んでドルを売り、円を買い戻さなければならない。その過程で発生する激しい円高が、いわば円のキャリートレードの「巻き戻し」である。
過去を振り返ると、1998年の巻き戻しは140円台から110円台へ、07年以降の巻き戻しは長い時間をかけ、120円台から70円台まで円高になって底打ちした(いずれもドル円レート)。今回の150円台から一気に130円台までの円高というピークアウトの仕方をみると、過去の事例に引けを取らない速度で巻き戻し相場が進行しているとみられる。
これまで円安を理由として値上げされた製品や外食産業も、この円高を受けて「還元値下げ」が発生するのではないか? と考えた人もいるだろう。しかし、結論からいえば、今回の円高相場によって簡単に「還元値下げ」が起こるとは考えにくい。
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