日銀が今さらサプライズをしても、まだまだ「値上げ地獄」が続きそうな理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
日銀が続けていた“異次元”の金融緩和を見直すようだ。これにより、長期金利が上がるとともに、ドル円もやや円高に傾き「何かが変わるぞ」と感じた人も多いのでは。果たして本当に変わるのか?
なぜ、これほどの円高となっても、還元値下げが発生しないといえるのだろうか。これまで値上げ要因が発生したとき、多くの企業はやむなく価格に反映してきた。値下げ要因が発生したのなら、価格を戻すのでは――という考え方もできるはずだ。
しかし、企業の決算情報を詳細に確認していくと、今のように20円ほど円高に振れたとしても、「還元値下げ」はおろか、従来の価格に戻すことすら難しい様子が浮き彫りになる。
根拠となるのは、「企業の想定為替レート」だ。これは、海外と取引のある企業が、円建ての売り上げやコストを算定するために設定する為替の想定値である。海外との取引比率が高ければ、想定為替レートと実際の為替相場のわずかな差異が、大幅な業績の修正に響いてくることになる。
輸入販売を手掛ける企業や、生産原料の多くを輸入品に頼っている企業の場合、想定為替レートよりも円安となった場合は、仕入れのコストが上がるため業績の下方修正を余儀なくされるだろう。反対に、輸出産業においては、想定為替レートよりも円安となれば、円建ての売り上げが向上するため、業績は上方修正されることになる。
では、実際の企業は想定為替レートをいくらに置いているのだろうか。まず、輸出産業の重鎮であるトヨタ自動車を見ると、23年4月までの1年間における想定為替レートは通期で「平均1ドル135円」と設定している。足元のドル円相場は131.78円(12月22日午後3時30分時点)であるため、今後も同様の水準が継続すればトヨタ自動車の売り上げ・利益は圧迫されていくといえるだろう。
一方、輸入品で原材料を調達する家具大手のニトリでは、通期の想定為替レートを1ドル「115円」と設定しており、これは現行水準よりも円高となる想定為替レートだ。その他、森永製菓、INPEXはそれぞれ1ドル「132円」「131.1円」と想定しており、多くの企業は今期について1ドル130円程度の想定為替レートを設定している。
このことから、22年に企業が実施した値上げは、1ドル150円の天井水準ではなく、1ドル130円近辺を想定して設定されたものであるといえる。つまり、各社の値上げは実際の円安相場よりも緩やかなものであったということだ。
この結果は、企業物価指数と消費者物価指数を比較することでも導かれる。
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