サントリー・日本生命に続く企業は……? 賃上げムードが高まらない根本的な理由:働き方の見取り図(1/4 ページ)
サントリーが6%の賃上げを目指しているとのニュースに続き、日本生命も営業職員について7%の賃上げ方針を発表した。両社に追随する会社が現れて、賃上げ機運が高まっていくことになるのか――。
飲料大手のサントリーが大胆な賃上げ策を検討していると報じられました(「サントリー 5年ぶりに“賃上げ”を検討 定期昇給分含む6%程度」12月13日/FNNプライムオンライン)。さらに、日本生命も営業職員についてサントリーを上回る7%の賃上げ方針を発表しています。
物価高や実質賃金の減少、増税の三重苦に見舞われる中、巷(ちまた)では「うらやましい」「すばらしい」という声がある一方、「日本企業全部が賃上げしないと」といった声もあります。
しかしながら、帝国データバンクによるとインフレ手当を出した会社は一時金を含めても6.6%に留まり、賃上げに対する会社側のスタンスは、全体的にまだ冷めた印象です。果たして、これからサントリーや日本生命に追随する会社がどんどん現れて、賃上げ機運が日本中で高まっていくことになるのでしょうか。
賃上げ機運の高まりは見込めない
会社からすると、サントリーや日本生命のようにベースアップや定期昇給を含めた大幅な賃上げを実施するのはとても勇気がいります。なぜなら、未だ年功賃金の呪縛が残っているため、一度賃金ベースを上げると将来にわたりずっと上乗せ分が底上げされた状態で賃金を払い続けることになっていくからです。
同業他社も一緒に賃上げしなければ、自社だけがそのコスト増を負い続け、財務体力が奪われ続けることになってしまいます。その点、一時的なインフレ手当を支給するのであれば、まだ融通は利きやすい面があります。
また、経営環境を取り巻く厳しさも影響大です。社員側だけでなく会社側も、物価高・賃金増加・増税の三重苦の不安に見舞われています。
日本銀行が発表した企業物価指数によると、2022年10月の前年同月比は9.4%上昇。過去1年を振り返っても、8.2〜10.3%上昇と高い数値が続いています。
総務省が発表した消費者物価指数では、22年10月の生鮮食品を除く総合で前年同月比3.6%の上昇ですから、会社側はそれを上回る水準の物価上昇にずっと耐え続けてきたのです。
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