ホリエモンの宇宙ベンチャー「Our Stars」が仕掛ける“通信事業の地殻変動”:衛星通信3.0(2/2 ページ)
ホリエモンが創業した、北海道大樹町のインターステラテクノロジズでは、超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発が本格化している。「ZERO」によって超小型の人工衛星を打ち上げて、情報通信事業や地球観測事業の展開を目指しているのがOur Starsだ。ホリエモンに、Our Starsが研究開発している高速な衛星通信によって「衛星通信3.0を実現したい」と語る真意を聞いた。
「安くて軽い」地球観測衛星の開発目指す
一方、超低高度衛星による地球観測の事業では、日本の衛星が抱える課題の解決を目指している。
内閣府の情報収集衛星は、高度500キロメートルから600キロメートルの高い軌道を飛んでいる。画像撮影には大きなレンズが必要で、1基あたりの開発と製造には数百億円かかる。それでも画像データが写している範囲を示す画像分解能は低く、実際に飛ばしている数が少ないため、どれくらい短い時間間隔で撮影が可能かを示す時間分解能も低い。
画像と時間の分解能を高めようと、JAXAでは技術試験機「つばめ」(SLATS)を17年12月に打ち上げて19年10月まで運用。イオンエンジンを用いて271.1キロから181.1キロの間で6段階の軌道高度を保ちながら、高分解能の衛星画像を取得した。
Our Starsでは、「つばめ」に関わるなどJAXAに36年間勤務した宇宙機エンジニアの野田篤司氏を、21年9月に最高技術責任者(CTO)に招聘。安くて軽い最先端の超小型衛星の開発に取り組んでいる。
「数百億円もかかるものを、そんなにたくさんは飛ばせないですよね。であれば、安くて軽い衛星を作ればいいという発想です。高度180キロメートルくらいのところを飛ぶことができれば、市販のレンズが使えて画像分解能も高くなりますし(ビデオカメラの部品である)CCDを使って動画の撮影もできるようになります。市販のものを使うことで衛星1基あたりの製造コストは1億円を切って、大量に打ち上げれば打ち上げ費用を含めても5億円くらいでできるかもしれません。
それで100基の衛星を投入できれば、時間分解能も高まります。スターリンクのように、ほぼリアルタイムに情報が取得できるようになって、ビッグデータのビジネスも広がるでしょう。
国際的には高度100キロ以上が宇宙空間とされているので、100キロぎりぎりのところで飛ばすことができればいいのですが、大気が濃いために常時推進力が必要になるなど課題もあります。現状ではどのような推進システムにするのかを検討している段階です。通信衛星と同じように、ZEROの初号機や2号機に実証実験機を載せることができればと考えています」
政府の支援が宇宙ビジネスを後押し
堀江氏がこの1年あまりで大きく変わってきたと感じているのは、政府の宇宙関係予算だ。文部科学省の22年度当初予算と21年度補正予算を合わせた宇宙関係予算の総額は2212億円と、前年よりも88億円も増えた。官民の共同研究予算も盛り込まれている。全省庁を合わせた22年度の宇宙関係予算総額は5219億円で、前年よりも723億円増加した。
さらに、政府はスタートアップの事業化を支援する2000億円規模の基金を、22年度中に創設する方針を固めた。これまでは研究開発に対する補助金交付が中心だったが、基金では実証実験の費用のサポートなどを行う予定で、宇宙輸送ビジネスでの活用も想定されている。
「政府がスタートアップ支援の文脈に、宇宙の輸送系を入れたことで、補助が受けられる可能性も出てきました。国内の打ち上げロケットを使う衛星メーカーに対する支援も始まっています。政府がかなりやる気になっているのが伝わってきます。
日本の衛星ベンチャーはこれまでロシアやウクライナのロケットを使うことを想定していたところもありましたが、ロシアのウクライナ侵攻で打ち上げられなくなりました。10月にJAXAとIHIエアロスペースが開発したイプシロン6号機が打ち上げに失敗したことも、今後影響が出る可能性があります。日本独自で人工衛星の打ち上げができる環境を作るのは急務です。
23年はISTとOur Starsともに実際に使う物がたくさん出来てきますので、ドキドキできる1年になります。ZEROの次にはさらに大きいロケットや、有人宇宙飛行ができるロケットも構想しています。政府の予算が増えている中で、私たちももっと頑張っていきたいですね」
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