箱根駅伝ランナーの“足元”争奪戦 二強のナイキ、アディダスに番狂わせのプーマ:箱根駅伝の裏側でメーカーの競争(後編)(3/3 ページ)
正月の大人気イベントである箱根駅伝、スポーツメーカーが選手たちのシューズをめぐって熾烈なシェア争いを繰り広げている。国内の老舗ブランドであるミズノとアシックスに加え、海外大手のナイキ、アディダス、ニューバランスの5メーカーが“群雄割拠”の戦いを続けてきた。そしてこの乱世に乗じてプーマが、二強のナイキとアディダスの寝首をかこうと狙っている。箱根駅伝をめぐるスポーツビジネスの実態を見ていこう。
箱根駅伝を取り巻く大会にも変化
箱根駅伝のレースとは直接関係ないが、登録選手の選考に大きく関わるトラック10000メートルレースにも新たな動きが出ている。箱根駅伝を主催する関東学連は11月下旬に「10000m記録挑戦競技会」を開催してきた。共催は読売新聞社、特別後援は日本テレビ放送網、後援は報知新聞社、特別協賛はサッポロホールディングスと、箱根駅伝と同じ顔ぶれだ。20年までは青学大が好タイムを連発して、メディアをにぎわせてきた。
しかし、同レースから青学大が他校を引き抜くかたちで脱退。昨年から青学大・原晋監督が代表理事を務めているアスリートキャリアセンター絆ランニング倶楽部の主催で「MARCH対抗戦」を実施しているのだ。
明大、青学大、立大、中大、法大の5校が10000メートルレースに出場。各大学上位10名の合計タイムで順位を競い、優勝校に30万円(2位20万円など)の強化費が支給される。冠スポンサーはGMOインターネットグループで、レースの模様はABEMAでライブ中継。各校のチアリーダーが応援する華やかな大会だ。
その結果、10000m記録挑戦競技会のレベルは低下し、話題もMARCH対抗戦にさらわれた。アイデアマンの原監督により、淡々と行われてきた記録会がショーアップ化されて、新たな金脈が生まれている。
箱根駅伝ランナーの足元にユニフォーム、そして関連大会までもが多様に変化している。箱根駅伝をめぐるビジネスは今後もどんどん進化を遂げていくだろう。
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