東武鉄道があえて豪華特急「スペーシア X」をつくる理由:「リバティ」との違いは(1/3 ページ)
東武鉄道が2023年7月に運行開始予定の特急「スペーシア」N100系。一体どんな車両なのだろうか。500系「リバティ」も運行する中、新型車両を投入する狙いは。
新型車両の登場は楽しみである。特に有料特急となると、どんな車両が登場するか、わくわくする。
その意味では2023年最注目の特急車両は、東武鉄道の特急「スペーシア」新型車両N100系(愛称:「スペーシア X」)である。既に告知がなされているように、100系スペーシアの後継車両として、日光・鬼怒川方面への輸送を担うことになる。
100系スペーシアは内装の豪華さや座席のゆとり感で人気が高かったが、新しい「スペーシア X」は快適性を向上し、ラグジュアリー路線を進化させるという。
どんな車両なのだろうか?
贅を尽くした車両
東武鉄道の日光・鬼怒川方面へ向かう特急は、1700系、1720系「デラックスロマンスカー」時代から、私鉄特急では随一の豪華さを示してきた。もともとは国鉄の日光方面への観光輸送へ対抗するため、車両を豪華にしていった経緯がある。
「デラックスロマンスカー」の登場以降、国鉄を圧するようになり、国鉄は日光への観光輸送から撤退した。「日光への旅行は東武」といった傾向が今なお続くのは、かつて同社が国鉄を打ち負かし、その状況が現在もなお続いているからである。
「デラックスロマンスカー」の置き換えにスペーシアが登場した後も豪華さは続いた。シートピッチの広さや座席のゆったりさは、JRの特急ではグリーン車に相当するレベルであり、登場した時点では優雅さはほかの私鉄には圧勝するレベルだった。
その伝統が、新しいスペーシア Xにも受け継がれている。
江戸文化の伝統工芸をイメージしたエクステリア、日光東照宮の陽明門を意識した胡粉塗りを彷彿(ほうふつ)させる白い塗色といった見た目だけではない。車内も、座席車はスタンダードシート、プレミアムシートに加え、東武特急伝統の個室や半個室のボックスシート、展望席のコックピットスイートを用意。ラウンジにカフェカウンターも設け、クラフトビールやクラフト珈琲も提供する。
スペーシア Xは4編成で導入予定であり、現在のスペーシア9編成(稼働中8編成)を置き換える予定である。まずは2編成が7月25日に登場する。
さて、東武鉄道は最近、500系「リバティ」を導入したばかりではないか? と思う人も多いかもしれない。この車両はスペーシアほど豪華ではないものの、下今市で日光・鬼怒川方面へと分割できたり、野岩鉄道へ乗り入れたりと、利便性の高い車両として評価されている。
なぜ、500系リバティではいけないのだろうか?
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