賃金アップが相次いでも、見捨てられる「中小企業と40歳以上」の悲哀:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
賃金アップのニュースが相次いで報じられている。しかし、その背景について調べると、手放しに喜べない日本の現実が見えてくる。
低賃金が招いた実態
昨年、NHKの朝の情報番組でのミニ特集にVTR出演していた50歳男性の“給与明細”は、衝撃でした。
「20年前」というテロップが入った明細書は「14万8500円」で、「現在」は「16万8000円」。つまり、増えたのはたった2万円です。20年間で、基本給がたったの2万円しか増えていないのです。
「ここまできつい状態になるとは思っていなかった」と肩を落とす男性は、正社員です。看護師の奥さんと共働きで、世帯年収は700万円余り。月々の手取りは、夫婦合わせて40万円。住宅ローンもあるので、貯金をする余裕はなし。しかも、お子さんが大学に進学するため、学費は4年間で400万円。高校生のお子さんもいるので、生活を切り詰めても学費分は出ないため、学費ローンを組むことを余儀なくされたそうです。
新型コロナウイルス感染拡大が本格化した20年、学生の貧困問題を報道番組が毎日のように取り上げていたのを覚えているでしょうか。
親たちの賃金が上がらなければ、子どもたちも困窮します。
実際、1990年代には全学生の2割程度だった奨学金利用の割合は、親の収入低下と入学金や授業料の高額化により、2010年には5割を突破。しかも、給付型の奨学金を利用できるのは、年収380万円程度(4人家族の場合)とされているので、生活が苦しくても条件にギリギリ当てはまらず、貸与型しか使うことができない。
その結果、大学卒業と同時に「借金地獄」です。
日本学生支援機構が20年2月に実施した調査(令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査)によると、支払いを遅延した人(遅延者)のうち正社員が40.7%を占めており、遅延者の69.7%は「年収300万円以下」の若い会社員です。
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