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【4月施行】「育児休業の取得状況」公表を義務化 企業が事前に準備すべきことは?:令和5年の法改正トリセツ(3/3 ページ)
4月に育児・介護休業法改正があります。男性労働者の育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられます。企業が事前に準備すべき点は?
「育児休業取得状況の公表の義務化」に向けて企業は何をすべき?
令和4年度より育児、介護休業法は大きく変わっていますので、就業規則の改定や付随する帳票類の改定、作成が必要になります。現時点で終わっていない場合は、早急に着手しましょう。
また、育児休業取得状況の算出にあたり、配偶者が出産した男性労働者の数の把握が必要です。過去(例えば3月決算の企業の場合、令和4年4月1日〜令和5年3月31日)にさかのぼって確認するとともに、今後の情報収集の流れを決めておく必要があります。
併せて、企業として1年単位で実績を管理すべきものは他にも以下のものがあります。
- 年間の残業時間(36協定の起算日から1年)
- 年次有給休暇の取得状況(付与日から1年)
- 子の看護休暇、介護休暇の日数(就業規則に定めた起算日から1年)
育児休業取得状況は、事業年度単位で把握する必要がありますから、上記についても同じ起算月にすると管理が容易になるでしょう。
また男性の育児休業の取得率は、働き手にとって関心の高い数字と言えます。優秀な人材の採用や定着という面で企業にとって取り組む価値のある指標です。そのときにおすすめなのが「くるみん認定」です。
「くるみん認定」
- 行動計画を策定し、その行動計画に定めた目標を達成するなどの一定の要件を満たした場合、必要書類を添えて申請を行うことにより、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣(都道府県労働局長へ委任)の認定(くるみん認定)を受けることができます。
- 認定を受けると、くるみんマークを、商品、広告、求人広告などに付け、子育てサポート企業であることをPRできます。その結果、企業イメージの向上、労働者のモラールアップやそれに伴う生産性の向上、優秀な労働者の採用・定着が期待できます。さらに、公共調達の加点評価等を受けることができます。
今後、労働力人口の減少が続き、企業が労働者から選ばれる立場になることは自明の理です。また、人的資本経営という観点から「男女賃金の差異」「女性管理職の割合」など、さまざまな情報開示が求められるでしょう。
優秀な人材の確保と透明性の高い企業経営の第一歩として前向きに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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