東急は上げて、北総は下げて、京急は上げて下げて 鉄道会社の運賃には“意味”がある:やはり、仕方がないのか(5/5 ページ)
値上げに踏み切る鉄道事業者も増えているが、物価上昇だけが理由ではない。各事業者の狙いとは。
京急電鉄は近距離値上げ+遠距離値下げを実施
「値上げ」「値下げ」「沿線価値の向上」の3点を同時にやろうとしている事業者も現れた。京急電鉄だ。
京急電鉄は23年10月の運賃改定に向け、国土交通大臣に鉄道旅客運賃の変更認可を申請した。初乗り運賃は交通系ICカードで136円から150円にアップする。品川から京急蒲田までは199円から228円、横浜までは303円から347円になる予定だ。
一方で、遠距離は値下げする。品川から横須賀中央までは650円から620円、京急久里浜までは796円から710円となる。
京急電鉄では、41キロ以上の区間を現行よりも値下げすることで、三浦半島の新たな需要創出と沿線活性化を成し遂げたい考えだ。観光や定住の両面から、多くの人に三浦半島を訪れてほしいという意図がある。
一方、短距離の値上げも鉄道施設の価値に寄与するものとなっている。品川、羽田、川崎エリアの改良工事や、ホームドアやバリアフリー設備の整備などに当てる費用を、近距離での利用者に負担してもらう考えである。
遠距離では、通勤利用者や観光利用者などの負担を減らし、利用者の満足度も高める。品川から横須賀まではJR横須賀線で814円(交通系ICカード利用時、以下同)、久里浜までは935円と、JRのほうが高い状況にある。しかも久里浜の場合、京急電鉄のほうが短時間で行ける場合が多い。
値上げ部分で鉄道施設の価値を向上し、値下げ部分で誘客する。これが、京急電鉄の狙いである。
運賃を変えるにあたって、鉄道会社はそれなりの“意味”を持っている。単に物価が向上するから値上げするのではなく、鉄道と沿線の価値を高めるために、工夫しているのだ。
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